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マサキさん、チョコくれませんか。勉強しすぎて頭に糖分が必要みたいなんです。え、別にわざわざ買ってきてくれなくてもいいんです。はい、あなたが今食べてるそのチョコが食べたいなーなんて……え、何でため息吐くんですか。疲れたからチョコ欲しいんです。何笑ってんですか。今笑う場所じゃないでしょ!

アホか。んなこと言ってる暇あったら、勉強せなあかんやろ。名前、お前がそんなにやる気ないんなら、わい帰るで。

マサキさんのその一言で、少しだけ危機感を感じた私は黙って勉強机へと座り直す。もちろん受験に受からないとかの危機感じゃなくて、彼が私に飽きて返ってしまうかもしれないという危機感。近所に住む大学生の彼に勉強を教えてもらってるのは、私の志望校が彼のいる場所だから。私の憧れが、彼だから。ちょっとふざけた私がバカだった。やっぱり真面目に勉強してやろう。

そう意気込んで30分後。やっぱり私のやる気は切れ始めた。どうしてこうやる気が切れてしまうんだろう。私は燃費の悪い車ですか。あ、何かこの例え方カッコイイかも。何かに役立つかもしれない。何だろう、現代文とかかな。私、文系じゃないんだけど。

「名前、お前何呟いとるんや」
「…え、何も言ってません」
「嘘吐け。…お前、さっきから何も進んでへんやん。30分間何してたん?」
「…えっとあの、私って燃費の悪い車ですかね」

突然言葉に出てしまったそれを聞き、マサキさんは直ぐに真面目な顔をして「そうかもしれへんな」と呟いた。少しだけ、ショックだった。やっぱり私、燃費悪いんだ。何度やる気を起こしたって、直ぐに切れてしまう。そんなの、受験する以前の話じゃん。バカみたい、これじゃあマサキさん帰っちゃうよ。

「ええか名前。わいと同じとこ来たいんやったら、死ぬ気で勉強してみぃ。お前が本気に受かりたいんなら、わいかて協力したる」
「…マサキさん。私、本当はマサキさんと同じとこすごく行きたいです」
「なら、頑張り。わいも協力するし、応援もする」

ポンと私の頭に手を置き、そっと撫でてくれる。チョコはもらえなかったけど、最高なものをくれた気がして、やっぱり危機感が湧いてきた。あなたと同じところに行けないかもしれないと言う危機感、あなたが帰ってしまう危機感。今、頑張らなきゃ行けない。
その後、離れていくマサキさんが小さくそっと呟いた言葉を私はしっかりと聞いた。絶対忘れたりしない。この言葉で頑張るの。
絶対受かって、一緒に行こうや。



炭さんへ


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