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やっぱり私とトウヤ君って合わないのかもしれない。いつもトウヤ君はみんなからすごいとかカッコイイとか言われて人気もあってさ。私はそれに比べたら影みたいな存在だから讃えられるような言葉なんて言われたことないし、そもそも得意なモノとかないし。ねぇトウヤ君。私とトウヤ君が付き合ってるって、きっと周りから見れば不自然なんだよ。
言いたいことが言えて、私はスッキリとした。こんな小さなことだけど、私はこれで丸々5日間悩んだんだ。どんな反応するのだろう。そんなバカみたいなこと考えてトウヤ君の顔を伺う。瞬時に背筋が凍り付いた。今までに見たこともないような鋭い目つきで、私を見るその顔に、言葉が出ない。怖かった。

「バカじゃねぇの」

短く吐き出されて、流石にカチンと来る。5日間もこのことで悩んだ私を蔑むようなその目を止めて欲しい。言い返してしまえば、取り返しのつかないことになるとは分かっていても、止められなかった。
結局、トウヤ君と喧嘩して3日間喋ってない。珍しいな。こんなことで耐えていられるなんて。やっぱり私ってさトウヤ君と合わなかったのかも。
だけど、こんなことで終わってもいいの?
合うとか合わないとか、そんなんで終わってもいいような軽い関係だったの?違うでしょ。デートも行った。我が侭言って、欲しいモノも勝ってもらった。あの日々に勝るものを果てして私は持っているのだろうか。…きっと持ってない。今までの道、輝けてたのは隣にトウヤ君がいたからでしょう?





謝ったとして、許してもらえるだろうか。また前みたいに笑い合えるだろうか。もう一度、好きって言ってもらえるだろうか。不安なんて星の数ほどいっぱいあって、でもトウヤ君と喧嘩して得る後悔なんて宇宙にある塵ほどある。数え切れないくらいに悲しい思いをするんだったら今、もう一度話し合いたいと思うんだ。
受話器を手に持ち、震える声を抑え、平静を装おう。きっと聞いてもらえると信じてみよう。

「ねぇトウヤ君。今日、会えるかな?」

君に謝りたいから。
バカみたいなことで嫉妬したことを謝りたいの。前みたいに同じ速度で歩きたいの。そのことを伝えたいの。
ごめんね、もう一度だけ――。
私の言葉を聞くこともなく、トウヤ君は言った。謝るとかそういうの関係ないと言ってくれているかのように。「いいよ別に。…今日会えるから」と。
ほらね。また君と同じ歩調で歩き出せるよ。



れゆさんへ


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