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そこにある木の実、取ってもらってもいいですか?

小さな女の子、きっと5歳くらいだ。その子が私に頼んできたのは、木の上で成っているモモンの実を取って欲しいということ。小さい子から見れば、届くはずのない高さにあるものだから、困っていたんだろう。断る理由なんてない。
自分の手持ちからエテボースを出し、モモンの実を取ってくるように伝える。木登りが得意なエテボースから見れば、とっても簡単な頼み事。迷うことなくすいすいと木をよじ登り、あっという間にモモンの実を取ってきてくれた。


「これでいい?」
「うんっ、ありがとう!」


女の子は嬉しそうに私からモモンの実を受け取ると駈けていく。近くにコンテスト会場があるから、もしかしたらポフィンでも作ってあげるのかもしれない。私にはあんまり考えたことのない行動だけど。
すると、エテボースが私をとんとんと叩く。振り返ってみればエテボース特徴の3本の手にはモモンの実が握られている。これ、くれるってことなのか。それとも、まさかポフィンを食べたくなったとか?今まで食べたことないから。


「えぇとエテボース。これ、どうしろと?」
「ポフィン作れってこと?」
「それとも、一緒に食べようってコト?」


3つ目の質問にエテボースは首を大きく縦に振る。頷いているってことは、モモンの実を食べようってか。でも今までポケモンたちにばかり食べさせてきたモモンの実を食べるなんて初めての体験だから、少し不安。そんな私の前でエテボースは美味しそうに実に齧り付く。まるで私に「大丈夫!」と言ってくれているように。

思い切って一口それを口にすると、中では今までに食べたことない甘みが広がった。モモンの実が甘いってことは知ってたけど、まさかここまでとは。思わず笑顔が綻び、エテボースと見つめ合う。


「ありがとう、エテボース」


美味しいモモンの実を食べさせてくれて。


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