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カラカラと乾く喉。ぐうぐうと鳴り続けるお腹。誰か私を満たしてください。飢え乾く私に、どうか水を、食べ物を、生きる力を下さい。私をどうか歩かせてください。前に進むよう急かしてください。お願いだから、立ち止まらせないで。

立ち止まったら、追いつけなくなる。ずっと恋い焦がれて追いかけてきたのに。今更倒れるなんて出来ない。仮に追いつけなくても、彼が見た景色を、彼が立ったその場所に、彼が経たその時間と、同じ物を見て、行って、過ごしたい。ここまで来たの。お願い神様。私を最後まで走らせて。

願って届かないって分かってたけど、立ち上がらなくちゃいけない。誰かに立ち上がらせてもらうんじゃない。自分自身の力でやらなければならない。人に頼ってその場所へたどり着いたとしても、そこには私の求めたモノなんてありはしない。
そんなとき、ライブキャスター鳴った。名前を見たら、心臓が跳ねた。どうしてこんな時に。正直、もう喋る気力もないのに。


『名前?今お前どこ』
「…分からない」
『は?分からない?どこの町』
「何処の町かも、どこの道路かも分からない。…もう、だめかも」
『ちょ、待て、今から行くからさ』
「………」
『おーい死ぬなよー」


何かに夢中になって、食事も水も取らないなんてよくあることだ。言ったら怒られたけど。でももういい。来てくれるって。場所が分からなくても、きっとあんたは来てくれる。だってイッシュを救った人だから。
だからそれまで、私は私を保っていなきゃいけない。何にも満たされない私、早く酸素を下さい。あなたがいることで、私は生きようって思う。あなたがいることで、満たされるのです。


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