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いつもなら爽やかなはずの私たちの教室は、何でか険悪なムードに包まれていた。多分ほとんど私のせいだと思うけど…。でも、やっぱりどこか理不尽な気がしてならない。
朝登校すれば、そこには昨日会ったサッカー部の女の子がいて、茜ちゃんとしゃべっていたのだ。私に気づけば、狩るような勢いで近づいてくる。
そして、今この状況だ。

「あの…私に何か用ですか?」
「昨日サッカー部覗いてたのってお前だろ?」
「…はい」
「私水鳥ってんだ。お前昨日浜野に用があったんじゃねぇの?」
「…あ」

水鳥…さんに言われて、私は初めて昨日浜野に借りてた漫画を返そうとしてたんだ。だけど結局重いから全部倉間くんに押し付けたんだっけ?
そのこともちゃんと説明しなきゃいけないのに、ここでぼーっと突っ立っててどうする私!いやむしろ、人に言われて気づかされるなんて、どこの間抜けだ私!今すぐにも隣のクラスに行かなきゃ。

「えっと、水鳥さん、ありがとう!私ちょっと浜野んとこ行ってきます!」
「水鳥でいいって」
「失礼します!」
「…あいつあたしの話聞いてないだろ」

後ろから何か言われてる気がしたけど、気にしない。それより、隣のクラスに――。走って入り込んだ先に、何でか倉間くんがいたことを少し戸惑いを感じたのは嘘じゃない。だって何でこのタイミングで君なんだ!

「名字?!」
「倉間くん、浜野って教室にいる?」
「いるけど」
「ありがとう!あ、昨日貸した漫画どうだった?」
「…ふつう」

そこまでお気に召さなかったか。まぁいい。結果的に私は軽い思いをして家に帰れたんだから。終わりよければ全てよし、ってよく言うしね。
倉間くんの指差した方に浜野はいて、速水と何やら話している。2人が仲良いのは今更なんだけど、今はそっちより大事な話があるんだ。

「浜野!漫画倉間くんに貸したから!」
「は、名字?!それどーいうこと」
「持って帰るの面倒だったから、全部倉間くんに貸しちゃった」
「ちゅーか人の勝手に貸すなよ」
「まぁまぁ気にしないで」

浜野があのときサッカー部に少しだけ残っていたら漫画返せたのかもしれないけど、会ったのは倉間くんだったからなぁ。浜野は少しだけ不思議そうな顔をして「名字って倉間の何?」なんて質問を投げかけてくる。それに戸惑うようなことはもうない。私は言い放ってやった。

「友だち、だよ」

多分だけど。
多分私と倉間くんって友だち。納得してない私なんて、多分いないと思うよ。


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