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いつの間にか寝てしまった私が目を覚ましたのは、昼か夜かも分からない中途半端な時間。ただその場には誰もいなくて、側で不思議そうに私を見あげているピカチュウがいただけだった。
そっと手を伸ばし、撫でてあげると可愛らしい声を上げる。だけど近づいてはこなかった。いや、こんなことしている場合じゃない。見あたらない人影を探し、外へと出る。雪が降りしきる中、レッドは直ぐそこに立っていた。


「レッド、何してるの?」
「…何も」
「本当?何か、あった?」
「どうしてそう思う?」


問いかけの上に問いかけを重ねられ、返事に詰まってしまう。どうしてそんな質問をするかって、そんなの多分何となく、っていうのが合っている。直感であなたに何かあったと思った。それじゃ、理由にならないかな。


「名前、寒くない?」
「寒くないよ」
「…じゃあ、お腹空かない?」
「空かない」
「…じゃあさ、」


寂しくないの?
小さく呟かれたそれに、何だか気が抜けた。何を聞かれるのかと身構えれば、そんなことか。少しだけ安心して、少しだけ嬉しかった。不安そうに私の顔をみて振り返るレッドにそっと駆け寄って、囁いた。
寂しくない。大丈夫。
その二言だけで十分に伝わる想いをありったけに込め、レッドの手を握った。確かにこのシロガネ山にずっと籠もりっぱなしのレッドに付き合ってる私は、最近レッド以外の人と会ってもないし、食事を抜くことも時々ある。だからきっと心配して、聞いてくれたんだよね。
だけどそんな心配、杞憂だよ。私は自分で選んで、君といる。君と過ごしている。今までも、これからも。
たとえここが世界の片隅で、この先この場所に誰も訪れることがなくても、誰にも会うことがなくても。


「レッド、私は君といられればいいよ」


二人でなら、大丈夫だって。
私の中ではそれしかない。それ以上も、それ以下も。だから、何も要らないの。欲しいと思わない。ここに在ることが、私の幸せ。



企画:ニュクスの花瞼様提出


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