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私と手を組まないか?


唐突過ぎて尚且つ、話の意図が読めない言葉に私はすぐさま声を発する。


「話の意図が読めませんが」

「なあに、私も学者の端くれだ、少しの仮説を立ててみた。先日、君は偶然ながらもリオン達と共に行動しただろう。
好奇心の強い君のことだ。ソーディアンのことや、神の眼のことについて調べているのではないのかな?
恐らく、私が君の立場でも自らが持つ知識以外の事にも探求するはずだろうからね」

「仰るとおりでございます。私自身、1000年前の天地戦争に関わることは簡単な書物での確認でしか今までして参りませんでしたが、
生きた歴史…神の眼やソーディアンを実際に目にして興味が湧いて、ヒューゴ様が言うとおり現在研究時間を費やしております。
しかしながらソーディアンに至っては天才科学者、ハロルド・ベルセリオス博士が残した書物しか参考になるものはなく、
ましては彼の記すものには理解が追いつくところが限られていて、悔しいながらも現状足踏みしている状態です」

「私の思った通りだ。してレイ君、君はソーディアンを調べていての最終的な終着点はどこになるのかね?」

「…難しいことを言いますね。自身でもソーディアンが作れたら…とは思うのですが、過去と違いそれまでの才能と設備を整うことは
現代では不可能に近いです。ただ、彼が記す書物には理論上、ソーディアンがなくとも晶術が使えるということなので、
力不足ながらも自分でも使えたらまた新たに発想が広がる気がするので、現状ではそこになります」

「やはり君は賢いな。実際、今の時代にソーディアンを作る設備や技術はない。君が携わったところで生きている間に作れる保証はないに等しい」

「……ですから、それを承知の上の晶術の使用へ模索を始めているのですが」

「まあ、そう不機嫌にならなくてもよい。言っただろう、“私と手を組まないか?”と」



そう言い残すと、少し待っていてくれといい客間を出るヒューゴ様。
しかしながら、自分でも不可能だと思っていても真正面から否定されるとあまり機嫌のいいものではない。
そしてすぐにヒューゴ様が戻ってくる。


「私は君の研究に最大限に力を貸そう。私が若いころなら君の事を羨ましく思うくらい君は優秀だ」

「これは……」

「なあに、昔見つけたそこらより少し純度の高いレンズだ。まあソーディアンのコアクリスタルには及ばんが、滅多に見る事が出来ないものだろう」

机に差し出されたのは私が理想としている純度が高いレンズだ。
確かにヒューゴ様の言うとおり、探すのは極めて困難だ。


「それで、私からは何を得るつもりで?」

「なあに、そんな怖い顔をしないでくれ。君には私が困ったときに力になってほしいだけさ。あまり難しく考えなくていい」

「そう言われても、私からしたら喉から手が出るくらい求めているものをぱっと目の前に差し出されたら困惑します」

「フフフ……そうか。私は将来有望な若者に投資をしただけさ。あまり気にすることはない。またこの屋敷にある資料も好きな時に使ってくれたまえ。
話は通しておこう」

「…そこまで言われたら結果を出したくなりますね。ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」

「成果を期待しているよ」

「期待を裏切らぬよう努力します。あと、早速ですが、この屋敷の書庫も失礼していいですか?」


ヒューゴ様はもちろん、と了承し、書庫まで案内してくれた。
私は深々と頭を下げ、机のレンズをバッグにしまう。
学者の書庫はやはり専門的なものが多く、見たことがないものも数多くあった。
いくつかの本に見定め、
思わぬ助け舟だと思いながらも、必ず、成功させなければと決意を固める。
その足ですぐさま研究所に戻った。