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金髪の彼の表情は見るからに曇っていくが
私はというと、表現しがたい程悦の感情が高ぶっていた。



「このティアラはちょっと…いろいろあって」

「フン、罪人ごときが自分の罪を認めないで誤魔化すのか。とんだ身分だな」

「リオン…だからこれはルーティが」

「何!?私のせいだっていうの!?あんただって大事な飛行竜に乗り込んだ密航者でしょ!」

「ルーティだって!国宝を盗もうとする犯罪者じゃないか!」

「まあまあ、過去を振り返ったって仕方ないさ、な、スタン、ルーティ」

なんだか色々ワケアリの“罪人たち”のようだ。話がどんどんズレていく。
となると、客員剣士はただの見張りか?


ぼんやりとやり取りを聞いていたら、矛先は再びこちらに向いた。

「おい、貴様。何を企んでいる?」

「だからリオン、女の子一人で……」

「所詮、田舎者にはこいつの事は分からんだろうな。悪魔の頭脳と言われるこいつは
科学者として拾われる前は腕の立つ万屋だと聞いている」
「…左様でございます。そんな過去もありました。ですが私は決して後を着けていた訳ではありませんし、
貴方方を狙っていた訳ではありません。私自身の次なる研究材料を探しにストレイライズ神殿に向かう道中でありました。
その先に皆様方の姿が見え、こんな森の中での場違いの賑やかさに驚き、
また、見慣れない技に興味を惹かれたのは事実でございます。どうか軽率な行動をお許しください」

間違ったことは言っていない。そもそも私は処分に値するのか?
いや、流石に怪しいといっても身分も知られている上、危害を加えていないのだから注意で済むはずだろう。
実際客員剣士殿は少し考える様子を見せている。
しかし今の私の興味の矛先はこの罪人たちが所持している“ソーディアン”だ。
まず普通に研究所に缶詰であればお目にかかることはないだろう。


「…、くれぐれも立場をわきまえて行動するんだな」

「ありがとうございます。あと、おこがましいですが一つだけお願いがあります。
私も一緒にストレイライズ神殿に同行してもよろしいですか?
そして皆様が所持されているのソーディアンですよね?そのソーディアンの性質を科学者として頭に入れておきたいのです。
貴重なソーディアンを拝見する機会など到底ありません。お願い致します」


「それなら全然大丈夫だよ!なあリオン!」

「何故貴様が勝手に決める!僕たちは重大な任務の最中だ。…まあ、神殿までの道中だ。
帰り道に見覚えのある科学者が飢え死にされていても困るからな」


「ありがとうございます。皆様、改めて失礼致します。
私はレイ・スターレイズと申します。ダリルシェイドにて科学者をやっております。
何分端くれですがよろしくお願い致します」




「俺はスタン・エルロン!よろしくな!」

「私はルーティ・カトレット、レンズハンターをしているわ」

「マリー・エージェントだ。ルーティと一緒にレンズハンターをしている」

「…リオン・マグナスだ。短い道中とて足手纏いにはなるなよ」





思いもよらぬ収穫だ。こうも上手く同行できるとは私の日頃の行いのよさか。
実際のところ神殿に寄るまでに、どこまで頭でまとめられるのか。
あの後すぐに戦闘に入ったが、大まかには把握をした。
リオン・スタン・ルーティがソーディアンマスターとして、各々『シャルティエ』『ディムロス』『アトワイト』を所持している。
また、得意な晶術・属性がそれぞれ違う。
ソーディアンは書物でさらっと見た程度だったが、やはり現代には存在しない純度の高いレンズが組み込まれている。
また、残念ながら私には素質というのがないらしく、ソーディアン達の声は聞こえない。
そして聞こえないところで私の事を言われているのはあまりいい気がしない(スタンなんかは大声で「女の子をこんなところで放っておけないだろ!」)
なんて言っていたので何の話かは察しがつくが…
しかし、世界に6本しかないソーディアンの半分が揃うというのは、何かの偶然なのだろうか……