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ストレイライズ神殿までの道のりは少し遠く、モンスターに遭遇するのは必須。
最後にモンスターを倒したのはいつだろうか、思い出せないくらいに昔のようだ。
お金はある。たまには装備でも新調しようと当初のアクセサリー屋の他に防具や道具も買い漁った。

「お嬢さんみたいなのが大量にグミを買うのも珍しいねえ」なんて道具屋のおじさんは言っていたが、
まさにその通りだろう。ダリルシェイドでいっぱいにグミを買うなんて、騎士の方々か、レンズハンターくらいか。
上記に当てはまる外見ではない私にそう言葉が出るのは不自然なことではない。
さあ、少しの旅に出よう。




あと15分くらいか。森の中も終盤に近付いている。
刀の腕は我ながらあまり鈍っていないが少しの体力の衰えは感じる。
さて、そろそろ休もうなんて思った矢先、



「ファイアボール!!」

「ちょっとスタン!どこ狙ってんのよ!こっちが危ないじゃない!」


すぐ先になんだかとても賑やかな声が聞こえてくる。
しかも、ファイアボールってどんな技なんだ。ただただ気になる。
そんな名称の技は聞いたことがないので興味がある。少し物陰で覗きながら近づいてみよう。


「全く…なんでこんな奴らと僕が…」

「まあリオンもそんな事言うなって。神殿に行って帰ってくるだけだろ?」

「いーや、このガキの言うとおりよ!いくら報酬があるからって何でこんなガキと…ってちょっとタンマ!
冗談だから、それはやめてよね!」

「口に気をつけるんだなヒス女。…またモンスターが来るぞ!」

「さあて!いっちょ暴れようじゃないか!!」



近い距離ではないのではっきりとは分からないが、なんだか協調性がない集団のようだ。
しかし、金髪の青年を除けばある程度戦いなれている集団のようだ。
とくに黒髪の背の低い少年は見かけによらず…って彼は客員剣士様ではないか。
となると、任務の途中だろうか。それにしても見慣れない剣を揃えているな。
客員剣士は世界に6本しかないソーディアンを所有しているというが、他の人たちも貴重なものを使用しているのだろうか。
だとすれば先程の技の名も[晶術]だとすればある程度の合点はつくし、各々の戦い方も特徴的だ。
しかし女性も混じっているし兵士だとはとても考え…

「おい」
「なんでしょう。今考察に忙しいので後にしてもらえますか?」

「…ほう、この状態でか」

カチャ…と背後から首筋の鉄の冷たい感触が伝わる。

まさかと思い後ろをゆっくり見ると、先程まで考察している集団の一人、
ダリルシェイド客員剣士のリオン・マグナスが私を冷めた瞳で見下している。

「貴様は何者だ。何故僕達をつけている」
「…無礼をお許しください。客員剣士様。私は城内の科学班として勤めております、
レイ・スターレイズと申します」

「聞いたことがある。若い女研究者は悪魔の頭脳だと。貴様か?」

「はい、あまり聞いていていい気はしないのですが、そのように言われることもあります」

「では何故、貴様のような科学者がこんな所で僕たちをつけたいた?」

「それは…」


「おーい!リオン〜!!」

「煩い!僕はそれどころではないんだ!」

「それどころではないって…あんた途中でいなくなったと思えば何で女に剣を向けてんのよ!!」


先程の集団が戦闘が終わり、客員剣士を見つけにこちらに近づいてくる。
私は依然、疑われているまま首にソーディアンと思われる剣を離そうとはしない。
ここでむやみに逃げ出したら私は生きて帰れないだろう。
おとなしくうつむいていると、すぐさま金髪の青年が声を上げた。

「何してるんだよリオン!急にいなくなったと思ったら女の子を脅して!
…なあ、きみ大丈夫か?」
「脅してなどいない、大体貴様らは気付かなかっただろうがこの女は僕らをつけていた。
この大事な任務のときにつけているなど怪しすぎるだろう」

「女の子一人で俺らをつけたってきっと何もできないよ!リオンの勘違いじゃないか?
なあ、ごめんな。いきなり剣を向けられて。怖かっただろう?」


無理やり客員剣士を後ろに引かせ、私に立つように促す。

「ありがとうございます。おかげで助かりました」


彼にお礼を言ったところではじめて彼の顔を見る。

すると屈託ない笑顔を返してくれたが、頭部にある見覚えのあるティアラを目の当たりにする。

「そのティアラは……」




一言発した後に、彼の笑顔がどんどん曇ったのは印象的である。