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今日もダリルシェイドの街は晴天で賑やかさを保っている。
普段から道行く人々の明るい表情は都ならではの華々しさを表している。

しかし私は憂鬱だ。

この研究所は私の職場になっているが、かれこれ3日も缶詰なのだ。

今は朝の10時
風呂も入っていないため自慢の髪の手入れも出来ず、とても年頃の女の格好ではない。

「レイ、あとどれくらいですか?」

「1時間はしっかり欲しいですね。どうしてもいいデザインが浮かばなくて」

「…とは言っても、貴方は朝からずっと机に伏したままではないですか」

「これでも私はすべての細胞をフルに動かしているのです。
何より私はこう見えても18の女です。 いくら拷問用として作られるティアラでも、
ある程度のデザインは必要と考えています。無機質な物で 警戒されるより、少し可愛くて見た目との
ギャップの えげつない物を作る方が技術者としても楽しいじゃないですか。 ということで、まだ時間はかかります」

私は間違ったことは言ってない。
城から私達科学班は発信器付き拷問装置を作るよう 要請を受けた。
如何にも拷問装置の存在感が強い物では 持ち運びが不可能で、
尚且つ小さく目立たない発信器では 壊れる可能性や取り外される危険性もあるため、 模索を繰り返し、
行き着いたのが電撃を浴びせる事ができるティアラである。
「仕方ないですね……。貴方は一度言い出したら 全く聞き入れもたないですからね、
しかし完成の時間は 迫っていることを頭して下さい、レイ」
「分かってますよー、レイノルズ」
「さて、私も心機一転、硬くてえげつないものでも作りますかね」

…なんだか物騒な言葉が聞こえた気がするが、私はとりあえず頭を働かせる。
やはり可愛らしさを追及してリボンやハートのポイントを入れた方がいいのだろうか。
はたまたメイドさんがするヘッドドレスをイメージしてレースでもつけようか。…いや、レースだと
電撃のダメージですぐに黒焦げだ。やはりシンプルが一番いいのだろうか。


結局悩んだ末に私はゴールド主体で、宝石が連なっているかのように見せかけたティアラを考案した。
まあ、宝石に見えるのはもちろん全てレンズだが。
女性の犯罪者には勿論、男性の犯罪者も…まあ可愛すぎない程度の作りになったであろう。


「流石レイですね、時間内に完成度の高いティアラを作るとは。
またこのレンズのお陰で非常に強い電撃も出せるではないですか。さすが悪魔の頭脳と言われるだけありますね。
私もいくつか作ったのですが、何かに欠けてる気がして。では早速ヒューゴ総帥に拝見してもらうとしよう」

「喜んでいただけて何より。では、私は寄り道して家に帰るんで。3日もこんな所にいたんだから、
しっかり3日は休みもらいますんで。それでは、ごきげんよう」

「あっレイ…―――!」


何やらレイノルズが話しかけていたようだが、私の気持ちは既に研究所にはない。
やっと外の空気を吸えたのだ。心が躍っている。健康のためにはやはり日光浴が大事なのだと気付かされる。
しかし年頃の女がこんな身嗜みも整えることなく街をふらつけるのか、答えは否。
やはりこんなギトギトした頭髪や崩れかけの化粧で…しかも研究所の白衣を纏って店なんか入れない。
家に帰ってシャワーでも浴びよう。



すぐに一人暮らしの家に着き、ソファに一通りの荷物を放り、シャワーを浴びた。
次の研究は何にしようか、たまには科学者らしく理論でも解いてみようか…
そう思いながら少し雑に荷物が置かれたソファに腰掛け本棚の本に手を伸ばし、やめる。
今日から何しようかな。気晴らしにアクセサリー屋でも見に行こうかな。
たまには神殿に出向き、次の研究のテーマでも探しに……






「ッ!」


知らぬ間に寝ていたようだ。
朝日がまぶしい。どうやら丸一日寝ていたようだ。
急いで着替え、愛刀を手に外に出た。