初めて見たとき
「初めて見たとき、お前に抱かれたいと思った」
ベッドに腰掛ける鉢屋に向かい合って立つ。バスローブを肩から滑らせると、ゆっくり腕を引かれた。覆い被さるように倒れ込んで、他人の体温を感じる。
「二回目大学で合ったとき、俺が誘ったの分かった?」
「ああ」
足が絡められ、ベッドに全身が乗るように上手く誘導される。こいつ結構遊んでる。髪を撫でながら、耳元で、どうしたらいい?と囁かれた。
「触って。好きなように」
肩をなぞるようにして鉢屋を脱がせながら言う。少し躊躇った指先が胸に触れた。引っ掻くように感じるところを刺激されて、鼓動が跳ねる。
「ここ、感じるの?」
視線で頷けば、口の端を吊り上げた鉢屋が唇を寄せた。次いでぬるりと舐め上げられる。
「う…ぁ」
「兵助のそんな声初めて聞いた」
「んなこと…ひゃっ」
歯があたる。痛いの直前まで噛まれて、唾液を含まされ吸い上げられる。腫れたように疼くそこからなんとか意識を引き剥がし、鉢屋の下半身に手を伸ばした。
そこは予想(無反応)に反して半勃ちで、ゆるゆる扱けばすぐに硬くなる。
「ちゃんと…っ鉢屋の硬くなった」
「んっ…兵助。名前で呼んで。あのときみたいに」
不覚にもその台詞に感じてしまった。三郎。口の中で名前を転がして、馴染ませて。三郎。名前を呼びながらセックスをするのはいつ以来だろう。
一旦右手を性器から離し、指を口に含んで唾液を絡ませる。ぴちゃり立てた音に三郎が目をやった。
「はは。エロい顔してる」
「うっせ…」
言葉のお返しに濡れた手で性器を扱き上げると、肩がぴくり跳ねた。
「気持ちいい?」
「うん。すげぇいい」
「じゃあもっとする?」
「いや」
お前の中に入れたい。と甘く甘く耳元で。反則だ。普段はシニカルな癖にこんなときだけ洒落にならないくらいカッコいい。右手で焦らす程度に性器を弄りながら、左手を伸ばしてベッドサイドのローションを取る。
「ほぐすから待って」
三郎に覆い被さる体勢から横に退いて、うつ伏せになり腰だけを上げる。興味深げに場所を空ける三郎を視界に入れないようにしながら、手のひらに出したローションを後孔へ塗り込める。自然と息が上がる。人差し指の第一関節までを含ませて、くちゅくちゅと柔らかくする作業。視線が注がれているのは分かっているが無視する。正直滅茶苦茶恥ずかしい。
「なぁ」
「っなに…」
「俺それやってみたい」
思わず指を止め、まじまじと顔を見てしまった
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