「お前、策だけじゃなく人を煽るのも得意だよな」

 三郎に兵助は視線をくれる。庄左衛門は上手く煽られてくれた。冷静に考えたら、城は落ちても館は落ちぬと分かるはず。そして、伊助が拘束されているであろうことも分かるはず。何とも容易い。

「んで、この五人衆がここに集まると」

 五人揃いの朱塗りの棒。これは皆の微妙な立場を表す。それぞれに支える城、主人、属する集団がある。これにあらぬ疑いをかけることは避けたい。そこでこの棒だ。各々の得意武器とは異なり、記憶にも残りやすい。素性を誤魔化すには丁度よい。

「学園に手が伸びなかったのは意外だったね」
「伊助はしっかり者で口が固いからな」
「みんなは元気だったか?」
「相変わらずだったぞ」
「仲良しでねぇ」
「俺たちとはえらい違いだな」
「全くだね。ほら、そろそろ行くよ」

 散じる五つの影は闇に溶けた。




 館がにわかに騒がしくなったことに伊助は気付いた。

「何だ?」

 呟くと切れた唇が痛む。しかしそこまで手酷い拷問を受けた訳ではない。どうやら、見た目の柔和さから手加減されたらしいと考える。
 何があっても即座に対応出来るようにと、横たわっていた身体を起こし、片膝を立てて身体を小さくする。後ろで縛られた手の爪は、牢の石壁を使って鋭く、首程度なら掻き切れる程度に研いである。息を潜め、様子を窺う。

「伊助」

 予想に反して響いたのは懐かしい先輩の声だった。兵助はすぐに牢の戸を開け、伊助を引きずり出す。

「先輩、どうして」
「話は後だ」

 その背に負われて逃げた。しがみ付けば、べったりと血糊が移った。



――
 というわけで、実は五年が館を落として伊助救出したよっていう。このあと伊助君は庄ちゃんの情けなさを聞かされて、口止めされるんです。
途中の会話は、私もどれが誰だか分かりません



後書
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