勘右衛門が縁側でゆるり茶を飲んでいると、虎若が近寄ってきた。逞しくなったものだと素直に感心する。

「お久しぶりです。先輩」
「うん。久しぶり。身体大きくなったねぇ」
「鍛錬に明け暮れております」

 成程、体育委員と見紛うほどの身体になった。勘右衛門の友人はそこまで鍛錬を積むものもなく、鍛えた分が反映されにくい身体つきのものが多いため新鮮に写る。

「しかし、虎若は生物委員会だろう。生物の扱いはどうなんだ?」
「それが中々に苦手で」

 照れ笑いが普段よりもぐっと幼い。久し振りの先輩に甘えているのだろう。

「苦手なんだ。じゃあ、あれの扱いも苦手?」

 勘右衛門が庭を指差す。そこには、破顔して駆け寄る三治郎の姿があった。

「いや、あれは苦手と言うか…てか生き物…ではあるんだけど」

 とたんに赤面してしどろもどろになる虎若を面白そうに眺める。そういえばそんなことをハチが言っていた。何ともまぁ、甘酸っぱいことだ。少なくとも自分が学生の頃よりは健全だ。あの頃、木下先生の寿命は確実に十年以上縮んだだろう。そんなことをつらつらと考える。

「虎若!!」

 三治郎が声を掛けるのと同時に、一羽の鷹が突っ込んできた。

「うぉっ!!」
「ねぇ、苦手なの?」

 もう一度からかう。全く、何を勘違いしているのか。これだから後輩に絡むのは楽しいと、勘右衛門は笑った。
 三治郎が素早く指を食み、鳴らした。どこから出したか皮の手袋をした腕に鷹が留まる。

「もう。虎若は委員長なんだから、この程度でびびらないでよね」
「三治郎、お見事」
「先輩。これって竹谷先輩の鷹ですよね」
「そう」

 勘右衛門は三治郎に近寄り、鷹の足から文を外す。ざっと目を通し、縁側を離れる。

「先輩?」

 訝しげに三治郎が声を掛けた。

「伊助が見つかったそうだ」




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