私の将来は既に決定している。どのような忍務(これは汚れ仕事と同義である)もこなす忍になること。
 戦災孤児の私は、忍ばかりを集めた集団に拾われた。それは決して人情からではなく、私には、ここまで育てられた恩を、十年間集団へ貢献するという形で返さなければならない。どうせなら、集団から離れた後も忍を続けようかとも思う。せっかく六年間を費やしたのだ。生業に丁度良いだろう。

「私はどちらも習うつもりだが?」

 何とも神妙な顔をして集まった友人四人にそう告げた。

「三郎…」
「どうした雷蔵?」
「どうしたら良いんだろう?先生方に助言を貰おうとしたんだけど、自分で考えなさいって」

 雷蔵は困った顔でそれでも笑った。

「俺は先輩達に聞いてみたけど」

 尾浜が雷蔵に背中からのし掛かりながら言う。

「ほんとにみんな、受けたり受けなかったりで。例えば両方受けてるのは善法寺先輩だけで。もちろん聞いた人の中でだけど。色だけは立花先輩、食満先輩。殺しだけは中在家先輩。潮江先輩と七松先輩は受けてないって」

 何だかなぁ。とぼやく尾浜。どうにも殺気だった顔の竹谷は、手土産と称して持ち込んだ酒を手酌で湯飲みに注ぐ。

「俺は受けねぇぞ。色は向かんし殺しはもっと向かん。避けられるんなら避けるのが道理だ」
「八左ヱ門らしいや。僕はどうしようかなぁ」
「好きなだけ悩むが良いさ雷蔵。どうせ期限まではまだまだある」
「いち早く決めた三郎に言われてもねぇ。てゆうか勘右衛門そろそろ重いってば」
「だって雷蔵、何か寂しいんだもん」

 そんなやり取りをする中、ふと兵助が黙り込んでいることに気付いた。普段から口数の少ないやつだが、こうにも無言なのは珍しい。

「兵助?」

 返事はない。かといって聞こえていないわけではなかろう。じゃれ合いを始めた三人に視線が向けられている。当の三人は各自の葛藤に手一杯なのか気付かない。

「兵助?」

 今度は優しく、睦言と同じ口調で呼び掛けると、視線がようやくこちらを向いた。

「悩んでいるのか?」
「……いや、違う」
「ならばどうした?」
「俺はどちらも受けるよ」
「無理に私に合わせずとも良いのだぞ」
「この自意識過剰。俺がそんな殊勝な性格だと思うな」
「そーですね」

 減らず口はいつものことだが、その口調から覇気が薄れている。それが少しばかし気になった




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