その日最後の授業は大分早く終わって、何かしらあるのだろうと思えば寸分違わずグラウンドに集められた。見回せばは組もいるし、い組もちらほら現れる。取り敢えず兵助と尾浜と合流した。
「よう」
軽く挙げた手は華麗に無視され、二人は後ろの雷蔵と竹谷に話しかける。まぁいつものことだ。
「らーいぞー」
「い組も一緒かぁ。何なんだろうね?」
「何か大事な話があるんじゃねぇか?」
「……」
兵助は無言。聡いあいつのことだから、何の話がされるのか予想がついているのだろう。薄らひそめた眉がそれを物語る。
「まぁ、何の話しかなんぞ大体想像つくけどな」
「何だよ鉢屋」
「あれだろう?選択授業。五年生からの」
薄ら笑って言い放てば、三人は総じて黙り込んだ。
「知っている者、気付いているものもいるだろう。五年生六年生の中でも、所謂お使いに行くものいないものがいるということを。その理由を今から話す」
普段顔も大きければ声も大きい木下先生は、やけに歯切れの悪い口調で静かに話し出した。
「諸君は4月から五年生となる。五年生からは、二つの自由選択教科が開講される。殺人術と閨房術だ。これは、自由選択と銘打っていることから分かるように、諸君に強制するものではない」
見渡せば、皆が一様に不安げな顔をしていた。木下先生は殊更優しく続ける。
「諸君ら全員が忍になるわけではないだろう。武家の子もいれば農家の子もいる。忍になったところで、こうした技が必要な局面は避けられぬものではない。そして、どうしても必要となった時には、またここに戻り学ぶことも許される。繰り返すが決して強制ではない。自らの将来をよくよく考えて選択しなさい」
先生は、まるで誰もこの授業を選択して欲しく無さげであった。後は事務的に選択期限を告げて、その場は解散となった。
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