八左ヱ門に嵌められた。他愛のない用事を押し付けられて、こないだの罰ゲーム悲惨なことになってしまったからまぁたまにはいいかと受けてしまい、授業に遅刻。小テストの残り時間10秒ほどで、名前を書いたらはい終了。もちろん零点。にこやかな八左ヱ門の腹に蹴りかましてやったが、奴の笑顔は崩れなかった。死ねばいいのに。下された罰ゲームは明らかに前回自分が受けたものを意識しているのか、1組の誰かにプロポーズしてくること。アホか。
 隣のクラスまでがやけに遠く感じる。後ろを付いてくる二人ののほほんとした期待混じりの会話が更に苛立ちを煽る。これが終わったら八左ヱ門をフルボッコにしようと心に決めて、1組の教室の戸を開けた。ターゲットは勘右衛門。実は前回も罰ゲームだと分かっていたらしい。分かっているなら乗るなり何なり適当に返してくれるだろうと踏んでのことだった。しかし、見渡しても特徴的な長めのハーフアップは見付からない。代わりに兵助が、席について教科書を開いていた。

「兵助。勘右衛門は?」
「勘ちゃんなら生徒会に後輩いじりに行った。ストレス発散とか何とか」
「あぁ…そう」

 心の中で後輩に合掌。きっと本気で怖い思いをしているだろう。八左ヱ門のせいだから、恨むなら八左ヱ門を恨んでくれ。ちらっと戸口で見学する二人に目をやると、数日前に自分がやったハンドサインと全く同じものが見えた。楽しんでやがるなくそ。仕方ない。真っ直ぐ兵助を見て、さらっと流してしまおうと口を開く。


「兵助。俺と結婚してくれ」


 たっぷり三秒間の沈黙の後、兵助は爆発的に顔を赤らめた。あれ、何か反応が予想外なんだけどどうして?何故そこで赤くなる。気付けよどう考えても冗談だろ。

「いや…えっと」

 しどろもどろな兵助なんて初めて見た。もごもごと口の中で何か呟いていたが聞こえない。むしろ演技か仕込みかと思って二人を振り返れば、兵助の反応に非常に深刻そうな顔をしていた。ちょっと待て、この兵助は素なのか。素で男にプロポーズされて照れてるのか?

「さっ…さぶろ…」

 冗談だと言ってしまいたい。ここで放棄したら昼飯奢らなきゃならないことは分かっているが、ここで続ければ遥かに厄介なことになりそうだ。しかし、俺が口を開くより兵助が話し出す方が早かった。

「まだ付き合ってもいないのに結婚とかは考えられないけど、それを前提としたお付き合いなら…いいよ」

 頼む。誰かこいつに男同士は結婚できないという大前提を教えてやってくれ。真っ赤な顔して潤んだ瞳で見詰められる俺には、今ここでそんなこと言えないから。何故か弄んでしまった罪悪感に囚われてる自分にはそんなこと出来ないから。と言うかここでごめん冗談とか言ったら俺最低じゃね?そうかこれはそういう罠なのか。全く1組の連中は底が知れないな。そしてさよなら俺の青春。

「三郎?ごめんこんな返事じゃダメ…だよな」
「いや…」

 とりあえずくしゃくしゃと頭を撫でてやる。気持ちよさそうにもたれかかってくる兵助はさておき、戸口の二人を睨み付けるが気の毒そうな顔をしているだけだった。
 とにかく、八左ヱ門は死ぬ目にあわせてやろうと決意を新たにした。



――
 王道に喧嘩を売ろうシリーズ(←違います)。こんな鉢くくと左右もいいじゃない。
 勘ちゃんとロリポップって凄く似合うと思いますがどうでしょう?
 兵助は結婚→日本じゃ無理→外国籍取得もしくは養子縁組パターンかなと自己解決しています。




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