・最早CP表記が無理
・竹→鉢→←くく
・だけど竹くく
・どろどろ
 閲覧は自己責任でお願いします





 夜半、鍛錬を終えて部屋に戻れば、障子を開けるが早いか素早く手が伸びてきて、胸倉を掴んだ。部屋に引きずり込まれ引き倒され、俺の上に馬乗りになったそいつは有無を言わせず俺の顔を殴った。

「殴られる理由は分かってるんだろ」

 薄刃のように硬い声には余裕の欠片もなく。

「分かってる」

 答えればもう一度、三郎は右頬を殴った。そういえばこいつは左利きだったなと、脈絡のないことを考える。

「兵助にお前は相応しくないよ」

 薄ら笑いを含ませて言えばそれが理由かと問うてきた。殴られたときに切ったのか鉄の味がする唾を、わざと唾棄するように床に吐く。

「だからお前は兵助と付き合ったのか?」
「そうだ。お前が相手じゃいつか兵助が壊れちまうと思ったからさ」
「嘘吐くんじゃねぇよ」

 あながち嘘じゃないんだけどな。呟きは届かずどこかに落ちた。

「お前、俺が兵助を見ていたこと、知ってるんだろ」

 知ってるさ。お前が兵助を見つめていたことも。兵助がお前を見つめていたことも。

「片恋相手取られたくらいで殴るなよ。初めっからお前がきちんと気持ちを伝えていたら済んだ話じゃないか」
「俺がお前を許せないのはそこじゃない」
「何?昨日のことか?」

 思い出したら笑いが込み上げてきた。厭に自嘲的で苦い笑いが。

「三郎お前ストーカーか?まさか見てたのか?」
「勘右衛門に兵助が泣き付いているのを見た」

 昨日、兵助を抱いた。恋仲ならば当然の行為だと説き伏せて、その白い肢体を押し倒した。兵助は応じたかに見えた。俺の手が肌をなぞるに合わせて、やめてくれ、と言った。やめてくれやめてくれ済まない。俺はどう頑張っても、三郎のことが心から離れない。お前を好きになろうとしたが、でも三郎が。
 兵助の、涙交じりの懇願を俺は無視した。無視して行為を続けた。

「お前が兵助を幸せにできるなら。兵助を傷付けることなく、兵助の気持ちを変えられるならそれでいいと思っていた」
「何ともお優しいことで」
「ふざけるのもいい加減にしろ。お前は兵助が好きだから兵助と付き合ったんじゃないだろう」

 そうだ。そんなことくらい知っている。

「お前は、素直に俺に思いを告げるべきだった」

 あぁ、そうだな。

「告げたら応えたとでも言うのか」
「お前の気持ちには応えられないと答えたさ」

 兵助を見つめていた三郎。三郎を見つめていた兵助。

「お前には教えておいてやるよ。俺は、鉢屋三郎は卒業後死ぬんだ。死んで別人として全てを捨てて。だから兵助に思いを伝えようとは思わなかったし、兵助もそれを察していたからお前の言葉に頷いた」
「そうかよ」
「そうだ。こんな殺伐とした道に兵助を引きずり込むわけにはいかないだろう」
「エゴだな」
「お前のやったことの方がよっぽどエゴだ」
「変わらないさ」

 三郎はするりと俺の上から退いた。障子に手をかけて振り返る。

「どこに行くんだ」
「兵助のところに」
「よかったな。傷心だからころりと落ちるぜ」
「本当に最悪だな。お前」
「どうするんだ」
「最悪な男のおかげで覚悟が決まった。兵助と添い遂げるさ」
「お前は兵助に相応しくないよ」
「お前よりましだ。お前はもう二度と兵助に近づくな」

 出て行く三郎を見送って、何故か笑いが込み上げてきた。衝動のままに、やけに乾いた笑いをこぼす。
 厄介なことに、笑いはいつまでも止まらなかった。



――
 三郎が好きで嫉妬した竹谷の話
 ぶち切れた三郎は一人称が私から俺になります(←俺設定)
 これでも愛はMAXあふれてます



short-title
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -