委員会活動と銘打って、他の委員会を冷やかして廻る。気怠い午後。委員長代理が向かったのはお気に入りの火薬委員会で、そこに同室者以上の思いを寄せる者がいる後輩も文句は言わない。いそいそと硝煙蔵に向かってそこで愛らしい友人にじゃれつこうと駆け寄った。


駆け寄る前に、乾いた音


普段皮肉げな笑みか悪戯じみた表情を張り付けた鉢屋の顔は硬く、冷えきっていて、頬を張られた兵助はそんな鉢屋を射殺すように見据えている。
まだ幼い後輩は恐怖に凍り付き、幼さが少しは抜けた二年生は仄か怒りを滲ませる。十割殺気の年上後輩は要注意。いつものことかと嘆息してとくと二人を見守った。

初めて見たときはそれはまぁ驚いた。驚きもしたし怒りもしたし、年上後輩が可愛らしく見える程度の殴り合いもした。(雷蔵が間に入らなければ、確実にどちらか死んでいた。)しかし冷静になって考えてみれば何のことはない。鉢屋が本気で引っ叩いたなら兵助がよろける程度で済む筈がない(倒れる)。兵助が本気ならこの程度避けられない筈がない(避けて殴り返すくらいに手が早い)。要は無自覚のじゃれ合いなのだ。
互いになまじ聡明で手の掛からぬ子供だったが災いしたか、二人揃って甘え方も甘やかし方も知らぬ身で。だからこうして端から見ていて危なっかしいことを繰り返す。
代わりに優しく言葉でも掛けてやればよいものを。兵助の腕を掴み長屋へ戻る背を見送る。成程確かに、今日は少々体調が優れぬようであった。取り残された後輩に、面白おかしく(鉢屋を卑下して)ことの顛末を説明する。

あれで恋仲なのだから世の中は不思議だ。

午後はゆるりと過ぎていった。



――
勘ちゃんは過保護
兵助をぶつ三郎が書きたかっただけ



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