・兵助による罵詈雑言



 貴様のどどめ色をした脳髄を引きずり出して、その曇りきった眼に映してやりたい。


 俺がどうしてこんなに怒り狂っているのかをお前は分かっているはずだ。その証拠にほら、お前の手は微かに震えているじゃあないか。上手くやったつもりなんだろう?けどな、俺はあいつから全部聞かされているんだ。あいつは俺に事の次第を全てぶちまけていった。だからこうして俺が、お前に話をつけに来たんだよ。

 一年と半年。それがあいつにとってどれだけ苦しく、長かったかお前には想像もつかないだろう。お前が持ち前の善人ぶった面であいつに近寄り、言葉巧みに陥落させるまでそう長い時間はかからなかったそうだな。どうだった?あいつは。教えてくれよ。俺はあいつがそんなときにどんな顔をして、何を言って、どう振る舞うのか知らないんだよ。意外そうな顔だな。お前が何を想像していたかは知らないが、俺とあいつは決してそんな関係じゃなかった。あいつから聞かなかったか?そんな顔するなよ。お前が知らなかったはずはないんだ。お前は知っていて、だからこそあんなことができたんだろう?

 愛し合っていたよ。馬鹿馬鹿しいが、俺たちは愛し合っていた。互いに寄り添って眠るだけで充分なくらいにな。お前には分からないだろうが、俺たちはそれで幸福だったんだ。同じ空間を共有するだけで、ただ側にいれるだけで、それだけでよかったんだ。もし片方がセックスをしようと言ったら、もう片方はそれに応じただろう。確かなものがほしいと言ったら、それが何であれ差し出した。互いにそれが分かっていたから、そんなことは言い出さなかった。愛し合っていて、そのことを知っていた。お前のような人間には分からないか?冷めきった、あるいはぬるま湯のような関係だと思っていたか?吐き気がする。お前はそんな俺たちの関係を都合よく解釈して、嬉々として踏みにじったんだ。

 遊びだったと聞いた。お前にとってはな。一年と半年間の遊び。あいつにとってはそうじゃなかった。拷問に等しい一年と半年間だった。何と言って脅したんだ?どうしようもないくらい卑怯で下劣な言葉だったんだろう?言葉だけじゃなく、行為も最悪で更にエスカレートしていったんだろう?本当に最悪だな。挙げ句の果てには何だ?自分のものにしたくなったってか?怒りを通り越して呆れ果てるよ。よくもまぁ、そこまで自己中心的な考えを行動に移せるな。本当に最悪だよ、お前。

 最後の夜、あいつは泣いた。初めて俺の前で泣いた。こんなに人を愛したのは初めてだって言って泣いた。それから、同じ蒲団に丸まって眠るまで、お前と自分の話を寝物語と話して聞かせた。あいつの目からは時折涙が零れた。それでも重い話にならないようにと道化た口調は崩さなかった。手を握り合って眠った翌朝、あいつは消えた。あいつは何も欲しがらなかった。キスもセックスもその他愛し合うなら持っていておかしくないもの全て欲しがらなかった。そうやって、消えたんだ。

 さぁ、これで分かっただろう?考える時間も過分にあったはずだ。返してもらおうか。お前が手に入れたと勘違いしているあいつを。分かっただろう。あいつが愛しているのは俺だけで、あいつを愛しているのも俺だけなんだよ。いいから返せよ。

 お前が飼い殺している、三郎を返せ。



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 絶対最強バカップル
 ただしプラトニックにつき(ry



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