「まるでトランプタワーのような関係だな」
男はにやりと笑ってそうさと答えた。
「全くもって危なっかしい」
嘆かわしい。と同じ形に言葉は響いた。
「まるでトランプタワーのような関係だな」
男は投げ遣りな無表情でそうだと答えた。
「何のことはないただの徒労だ」
虚構だ。と同じ響きで口が動いた。
男は言う。
「危なっかしいのは慣れるまでさ。震える手で慎重に積み上げて行くのも、そのうちただの単純作業になるんだ」
男は言う。
「徒労だなんてわかっている。それでも積み上げたてっぺんからの眺めは、きっとそう悪いものじゃないだろうな」
二人は言う。
「危うい関係を積み上げたその上で、同じ光景を見る一瞬の満足感と、崩落の莫大な浮遊感に溺れて墜ちられるならば、それは何よりも幸せだ」
緩慢に心中する恋
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