・鉢くくで番凩



 そうさなぁ…
 あいつらは寂しかったんだよ

 光は影になりたくて、
 それでも光でしかなくて
 影は光になりたくて、
 それでも影でしかなかった
 混ざるには違いすぎて、
 そしてよく似ていた

 あいつらは哀しかったんだよ
 だから二人、共に行ったんだ






 兵助のことを知りたいって?あいつは遠くにいったよ。今どこにいるかなんて知らない。けど、時々風の噂に聞くかな。戦ってるみたいだよ。今もまだ、二人で。
 昔の兵助は、真面目で堅くて潔癖だった。汚れ仕事が嫌いでね。そもそも争いごとが嫌い…っていうか理解出来ないみたいだった。何でそんなことするんだろって思ってたみたい。
 きっかけは知らないよ。でもそんな風に思ってて、それがいつか、願望になってた。この世の戦を全部止めさせるなんて、ね。きっと本人が一番無理だと思ってた。でも、そのためには何でもしたんだ。兵助は、手を汚すのだって厭わずに…。






 三郎のことを知りたい?あいつね。迷惑で子供っぽくって、でも悪い奴じゃなかったよ。ただ悲しいかな、あいつは忍に向きすぎてたんだよ。今もきっと日陰者なんだろうな。
 昔の三郎は馬鹿みたいにとんがっててね。世の中常に斜め後ろから醒めた目で眺めているような奴だった。そんな奴だったから、夢とか理想とかには懐疑的だった。素直じゃないよね。それは憧れの裏返しだってのに、絶対認めようとはしないんだもん。
 きっかけなんて知らない。零れるように、かな?そんな憧れが許容を越えて溢れ出してしまったんだと思うよ。自分が抱けない理想を相手に投影してしまったんだ。馬鹿な三郎。そんなもの、手を伸ばしさえすればいつでも握れるのに、ね。






 似ているな。とは思っていた。違うな気付いたんだ。二人が行ってしまう時にやっと。二人は似ていた。でもその有り様は対極だった。
 兵助は三郎の醒めていて現実をそのまま受け入れられるところに、どうしようもなく惹かれたんだろう。三郎は兵助の馬鹿馬鹿しいと分かっていてもなお理想を求めるところに、どうしようもなく惹かれたんだろう。そして何より、二人は寂しかった。望む自分になれなくて、分かり合える相手がいなくて、哀しくて、寂しかった。
 今も二人は共に翔けているんだろう。数多の戦場を、背中合わせに。混じり合えないことを哀しんでるだろう。けど、二人はもう寂しくはないはずだ。どうしようもなく孤独だけれど、二人なんだから。




 あれはまさしく、つがゐ陰陽だよ





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