・三郎が微S
・兵助誘い受





するりと白い腕が首に回された。特徴的な大きな瞳は細められ、匂い立つばかりの色気を振り撒いている。長くうねる黒髪は下ろされて、細い首をより一層儚げに見せていた。兵助の顔がこちらに寄せられ、しかし唇を触れ合わせることはなく代わりに唇が頬を撫でた。

「三郎は、俺が欲しい?」

珍しく甘ったるいお誘いに、その首筋を貪ることで応えた。

「さぶろ…まだ廊下…」

俺の部屋には誰もいないと途切れ途切れに伝えられる。ならばと兵助の腰を抱き、半ば引きずるようにして部屋に連れ込んだ。





部屋には几帳面に蒲団が二客敷いてあった。準備のいい奴。離されたそれの片方に兵助を投げ出す。乱暴な扱いに口角を上げる表情が蠱惑的で憎たらしい。しどけなく横座るその正面に腰を降ろして向かい合う。

「三郎は、俺が欲しい?」
「欲しいさ」

言葉を合図に自ら夜着を肌蹴る兵助。既に立ち上がった乳首を容赦なく摘まめば、珍しく嬌声が上がった。

「えらく今日は感度がいいな」
「うっさ…あっ……やぁ…」

こりこりとそこばかり苛めていると、兵助は自分で下帯を取り払った。その手は次いで俺の下半身に伸ばされる。

「んっ…三郎」

右手はゆるゆるとこちらの性器を撫でる。対して左手は、自らの性器を扱き上げていた。淫乱なその様に理性が焼き切れる。兵助の肩を掴み背中をこちらに向かせ、更に突き飛ばして腰だけを上げさせる。

「いっ…たぁ」
「そのまま自分の扱いてろ。でもまだイクなよ」

肉付きの悪い、しかし綺麗な曲線を描く尻を割り後孔を晒す。ひくつくそこは既に油か何かで馴らされ、赤く熟れててらてらと光っていた。

「自分で馴らしたのかこの淫乱」

遠慮なく指三本を突き立てれば背を仰け反らせる。

「ひゃっ…さぶろ…痛い…」
「痛いわけがあるか。こんなぐずぐずにしといて」
「やぁっ…やめ…っん」

やめてやめてやめないで。
ばらばらに掻き回せば途切れがちな言葉。上半身を支えようとついた左肘が震えを見せる。右手はゆるゆる薄皮を撫で、言い付けを守って達するところまでは至らない。いっそこのまま突っ込んでやろうかと思ったが、余裕のなさを晒すのは癪だったので兵助の右手を引き剥がす。

「前言撤回。お前ナカだけで一回イけ」

覆い被さるようにして両手を纏め蒲団に縫い付け、指を性器の代わりに中を抉る。爪を立てれば一際高く啼いて呆気なく精を吐いた。

「早過ぎ」
「うるさぃ……なぁ、早く…」
「早く…何?」



「俺を壊して」



湿った声がそこだけはっきりと冷たく響いた。何を考えているのか知れたもんじゃないが、都合よく解釈して前振りも合図もなく突っ込んだ。

「ふぅっ!!…んっ…くぅ!!」

絡み付く柔肉と食い千切らんばかりに締め付ける対比が堪らない。長くカリを使って突き上る。揺れる腰を押さえ付け、肉のぶつかる音を立てて激しく、自分の快楽だけを追い求めた。

「…ぃや…もっとおく…突いてっ…んっ!!」
「突いてほしいんなら、もっとこっち来いよ」

背中に貼り付く黒髪を手繰りぐいと引き寄せたら、痛みに背中を仰け反らせ兵助はまた吐精する。びくびくと意思に関係なく起こる括約筋の痙攣をやり過ごし、更に髪を引き反った背の曲線を鑑賞する。加虐的な行為にすら敏感に快楽を覚える身体は、脳髄が融ける程に刺激的。

「っ…今日…」

不意に言葉が意味を成す。

「一人…っあ!!そこ…」

甘言に含ませた針

「退学した…」

知っている。寡黙で堅実に努力を積む男だった。だが如何せん気が弱く、最近は草紙の世界に没頭していた。当然の結果、退学した。

「それがどうした」
「ひゃぁあ!!だめっ!!深…いっ」

腰を密着させ最奥を詰る。性器に手を伸ばせばしどどに濡れて先走りを垂らしていた。

「共に行こうと…」

生理的な涙が声に混じる。

「お前がぁ…っうん!!…人を殺すのも殺されるのも……ゃあ…堪えられないって」

はち切れんばかりのそれを扱く。

「俺が…欲しいって…」

知っていた。懸想されていることも、悪く思っていないことも。

「馬鹿みたいだよ」

ぞっとするほど醒めた声。

「っ!!…俺…は、忍になっ…あぁ!!」
「知っている」
「あんな奴にっ…俺は…ゃくれてやらな…」

いい加減にと短く激しく抽送を繰り返す。

「もぅ…やぁ…お前…にも…だ、三郎」

達した衝動でひくつくその奥に、思う様精を注ぐ。


「お前にも、俺はくれてやらない」


視界が白むような快感の中で、言葉だけがはっきりと刻まれた。





小競り合いの末、二人未使用の蒲団に同衾することとなった。さりげなく伸ばした腕枕はすげなく拒否され、結局手を握り指を絡めることで落ち着いた。

「そんなにいい男だったのか?」

とろとろと睡魔に囚われているであろう兵助に訪ねる。薄く開いた目でちらりと視線が交わされる。

「そうでもない。お前ほどじゃないよ」

唇が、皮肉とも挑発ともつかぬ弧を描いた。

「俺をここまで焦がすのはお前だけだ。三郎」

それはこちらの台詞だと、呟きはしかし眠りに落ちる兵助には届かなかった。



――
愛し合っているからこその距離感
くくびっちじゃないつもりなんだけど…



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