痛い。痛い。痛い。
これだけ一方的に痛い思いをしたのは久し振りだ。両足から血が流れる。痛い。
「尾浜ぁっ!!」
さくりと左腿裏に苦無が刺さった。また血が流れる。傷の深さから考えるに、投擲ではなく直に刺しに来ているはずだ。けれども未だその影すら見えない。
場所が悪かったかとちらり後悔した。疎らではあるが樹がそびえ、膝上までの雑草繁茂。仕方がない。眼で追わず耳で追おう。精々楽しもう。何せ、これだけ血を流したのは久し振りだ。
今度は右腿裏を刺される。苛立つ。痛い。痛いのは嫌だ。久し振りで楽しいかと思ったけれどやっぱり嫌だ。相手が見えないのは嫌だ。追い詰める喜びが半減する。
「どこにいる。尾浜」
いつの間にか食い千切ったらしい唇から血が流れた。痛い。見渡せども誰もいない。
不意に左腕が血を吹いた。浅くだがしっかりとついた傷。血の匂い。けれどもこの匂いは、獲物のものではなく自分のもの。
「どこだぁぁぁ!!尾浜!!」
「ここでーす」
目の前に、いた
「万力鎖返してもらいに来ました」
ふと消えた。違う消えた訳ではない。見失った。どうして、
鎖が弛み消えた。手妻でも見ている気分だ。
「じゃあ仕上げでーす」
右脇腹に苦無を突き込まれてやっと気付いた。こいつには音も匂いも気配も存在しないことに
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