先輩は間違えた。引くべきではなかったのだ。縄標がダメになった時点で、僕がその薄い(劣等感さえ感じることもある)その腹を晒した時点で僕を仕留めるべきだった。
 一歩引く、その動きに合わせて蜻蛉を切って間合いを図る。間髪を入れずに差し伸べた左手から針を飛ばした。勘右衛門お手製の暗器は、先輩が鎖鎌を振り回すと同時にその肩や腕を抉った。仕方ないよね。錘と針じゃ飛ぶ速さが全く違うもの。
それでも先輩は揺るがなかった。微かに鎖を操る手がぶれただけで、その姿は微動だにしなかったのだけど。

「先輩が僕に、縄鎖の扱い方を教えてくれたんでしたよね」

動いたらいけない。それは増幅されて錘に伝わる――

懐かしい声が耳元で蘇った。結局僕は縄が苦手なままです。けれど

「先輩。動いちゃったら避けられちゃうじゃないですか」

鎖をかわしてもう一度、隠した引き金を絞った。血飛沫が散るのを横目に、三郎と合流するためその場を離れた。




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