ねぇおじいちゃん。お面の話がまだよ。

 あぁ、そうだったね。でも、お面の話はもう少し温美ちゃんが大きくなってからにしようか。ごめんごめん。おじいちゃん話すのに疲れちゃった。このお話も実はお手紙になって残ってるんだ。そこに書いてあるから、温美ちゃんが大きくなったら一緒に読もうね。

 なんだか納得いかない。

 そうかい?じゃあ特別だ。そのお面、外してごらん。

 いいの?
 あら、これパパのお友達にそっくりだわ。

 そうだろう。びっくりしたよ。数年前まで二人とも顔なんか無かったはずなのに…。

 顔が無かったの?

 あぁいや。ね。

 これ、お内裏様がさぶろうおじちゃんで、お雛様がへいすけさんね。
 何でへいすけさんは男なのにお雛様なのかしら?

 それも温美ちゃんが大きくなったら分かるよ。

 そうかしら。
 ねぇおじいちゃん。あの二人、左手の薬指に指輪してるのにお嫁さんを見たこともないし、二人一緒に暮らしてるのよ。不思議だわ。私、大きくなったらへいすけさんと結婚しようと思ってるのに。

 それは難しいなぁ。
 さあ、よくお雛様を見ておくんだよ。温美ちゃんが結婚するときに、このお雛様は燃やしてしまうんだからね。

 どうして?きれいなのに。

 もう必要ないからだよ。お内裏様とお雛様はとても幸せそうじゃないか。
 おじいちゃんは、おじいちゃんが生きているときにこのお雛様を燃やすことができて、とてもうれしいよ。

 それも、大きくなったら分かるの?

 そうだね。大きくなって、世の中のいろんなものを見て、恋とか愛が分かるようになったら、おじいちゃんがまた教えてあげるよ。





――
 温美ちゃんは勘右衛門の娘(饂飩の漢字から超適当に)
 身分が高い子の方が兵助君です。




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