昨夜、まずは雷蔵が中在家先輩の部屋に泊まると言い出した。先輩の同室者はどうやらお使いに行っているらしい。そこで三郎が兵助を部屋に連れ込んだ。大人しく連れ込まれたあたり、大分兵助も三郎に甘えるようになってきたのだろう。最後に空いた兵助の部屋へ俺が転がり込んで、出来た者同士の甘い夜が確立された。久し振りの恋人と過ごす夜。しかし、勘右衛門はその夜、そんな気分じゃないと拒否をした。がっつくのも嫌だったので(自尊心の問題だ)、同衾するだけに止め、腕の中に恋人を抱き込んで眠った。寝付きの良い勘右衛門は、俺の胸にしがみついて、丸くなってすぐに眠りに落ちた。正直、その姿には色々と危ない思い(察してくれ)をしたが、やがて俺も寝てしまった。
 翌朝、目が覚めると勘右衛門は既にいなくなっていた。どうせ愛しい(俺よりも愛しているきらいのある)友人を叩き起こしに行ったのだろう。いつものことなので、特に気にすることなく三郎の部屋に向かった。
 どかどかと足音を忍ばせることなく廊下を歩く。どんなに気配を隠しても三郎は目を覚ますし、どんなに物音を立てても兵助は起きない。勢いよく部屋の襖を開け放つ。

「うわ…」

 一瞬何をしに来たのか忘れるような光景。申し訳程度に夜着をまとわりつかせ、肌を顕にして眠る兵助と、それを横で鑑賞する三郎。ぽつぽつと兵助の全身に残る赤い痕が、否応なく情事を思い起こさせる。

「私の兵助をイヤらしい目で見るんじゃない」
「アホか。そう思うなら蒲団ぐらい掛けてやれよ」
「馬鹿な。蒲団を掛けたら私がじっくり眺められないだろう」

 こいつが天才だなんて何かの間違いだろう。ジト目で睨むと鼻で笑われた。ちくしょう、俺がことに及べなかったのを知ってやがる。そこまで考えて、やっと本来の用向きを思い出した。

「なぁ、勘来てないか?」
「いや、今朝はまだあの小姑は来てないが」

 逃げられたのか?と笑う三郎に蹴りをかまして部屋を出る。朝飯にはひょっこり顔を出すだろうと、その不在を深く考えることはなかった。




 朝食の時間、一足先に食堂に来ていた雷蔵の顔が心なしかつやつやしているのを見て、何となく悲しくなった。三郎の後ろについて現れた兵助が、普段よりも前掛けを引き上げて頭巾を深く巻いているのが更に追い討ちをかける。破れかぶれにいいよなぁと呟くと、きょとんとした顔で、雷蔵が言った。

「何が?」
「お愉しみだったことが」

 途端に雷蔵ではなく兵助が顔を赤くした。雷蔵はきょとんとした顔のまま、そっちは違ったの?と問うた。

「んにゃ、全然。朝起きたら勘いなくなってるし。てかそうだ。勘見なかったか?」

 三人が揃って首を振る。もうしばらくすれば授業が始まるというのに、一向に姿を見せない。ちりちりと、首の後ろを焦がされるような不安に駆られた。
 勘右衛門は、いなくなった




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