13:45

 公園とは言っても原っぱにベンチが一つ二つ置いてあるだけのそこで、ベンチの一つに腰掛けて探し物は文庫本なんぞを読んでいやがった。

「思いの外早かったな」
「うっせぇよ」

 だらしなく着崩した制服姿は学内じゃあまず見られないもので、それでいて妙に似合って見えた。寛げられた襟元から覗く素肌と鎖骨のくっきりとした輪郭が目を焼く。久々知は、見上げた俺が逆光で眩しいのか、目を細めて髪を掻き上げる。優等生の癖に長く腰まである髪が、艶やかにうねっていた。

「いいから乗れ」

 生憎メットは一つしかないが貸す気もない。むしろ、厄介ごとは勘弁だしこのままどっかで振り落としてしまいたい衝動にも駆られる。まかり間違ってもそんなことは出来ないが(やろうものなら伊作さんに消されてしまう)。
 久々知はくたくたの(きっとほとんど何も入っていないのであろう)バッグに文庫本を突っ込むと、身軽にリアシートにまたがった。

「腹と首、どっちに腕回してほしい?」
「首に回したら間違いなく事故るぞ」
「じゃあ腹だ」

 そんなやり取りをした割には、久々知は俺に密着することなく、後ろで上手くバランスを取っていた。こちらとしても好都合だ。男に抱きつかれる趣味はない。

「なぁ、伊作さんってどんな人?」
「さぁな、見た目に反して怖い男だぜ」
「どんな見た目?」
「お前の好みじゃ無い感じ」

 何が面白いのか久々知はけたけた笑い出した。何とも掴み処の無い様に、会話をする気も失せて、後はひたすらバイクを飛ばした。



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