情報屋の真似事は、もともと遊びで始めたものだった。だから収支はそんなに気にしていない(そもそも売り手は伊作さんくらいしかいない)。だから情報を買うときは、まず値段の交渉から入るのが俺のやり方だ。
 相手の心情や置かれている状況、世相を鑑みて値段をつける。大概の売り手はそこで値段を相場よりも吊り上げる。そんな奴は信用できない売り手として、その後関係を持つことはない。だからといって安値をつける相手は、その情報自体が信用できない。俺は、人を見抜く術をそうして鍛えてきた。
 久々知兵助は、確かな情報を相場ぎりぎりの高値で売りつける、俺のお得意様でクラスメイトだった。

「何があった」
「話が早くていいな。残り30は足代でどうだ」

 何とも業腹な言い草に、思わず盛大に舌打ちをすると、伊作さんが携帯を勝手に取り上げた。何が起こったのか分からぬままに見上げれば、にこやかに早口で話し出す馬鹿上司。

「お電話代わりました。ボク、鉢屋君の上司みたいなもので伊作って言います。いきなりで悪いけど、君の話は僕が買うね。50でいいんだよね。とりあえず鉢屋君迎えに行かせるから。今どこにいるのかな?」

 この人がこんな行動に出る理由が分からない。あっけに取られているうちに会話は終わってしまった。しかも、俺が久々知を迎えにいくことが決定している。不機嫌をあらわにした俺に構うことなく、伊作さんは言った。

「鉢屋。○○通りから3ブロック入ったところの××公園」

 自分の知らないところで話の進む苛立ちは一入だったが、それでもバイクの鍵を握ってしまったのは、どうしようもない好奇心だった。




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テーマ「人外ファンタジー」
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