2012/05/07 01:31



・鉢くく上級者向け
・四肢切断済み
・監禁という名の同棲
・愛は溢れんばかりにあります
・現パロ社会人くらい

 閲覧は自己責任でどうぞ

















 思いの外仕事が延び、足早に帰路を辿る途中で閉店間近の花屋が目に入った。店先に並ぶ深紅の薔薇が余りにも綺麗で、兵助によく似ていたため一抱え購入して腕に抱いた。独特の豪奢な匂いに包まれて電車に乗りながらも、考えるのは兵助のことばかりだった。




 高層住宅の上の方、夜景がとても綺麗な部屋。ドアを開けてバッグを下ろして短い廊下を抜けて奥の扉を開ける。青を基調にまとめた部屋。胸の高さまで緩衝材で覆われた、クッションを敷き詰めた、カーテンのない大きな窓から遠く摩天楼の見渡せる部屋の真ん中で、兵助はぺたりと座り込みぼんやりと宙を仰いでいた。その目が急速に焦点を結び次いで膝立ちになってこちらに駆け寄る。揺らぐ。傾ぐ。前のめりになって倒れる身体をすんでのところで抱き止める。青いシャツに包まれた腕がひしと首に巻き付いた。

「遅くなってすまない」
「…もう帰ってこないのかと思った」

 行為とは裏腹に甘さの一切含まれていない声音であった。そう、兵助と私の間に甘さなど存在しない。あの日から、ずっと。
 肘から先10cmくらい。膝から下は15cmくらいしか残っていない兵助の身体。兵助自身が望んで私が切った。

 テーブルの上に目をやると、朝から全く変わっていない水の入ったグラスがあった。

「また何も飲んでいないのか」
「お前がくれるもの以外、何も要らない」
「水分補給くらいしてくれ」
「お前が飲ませてくれないなら要らない」

 そっといびつな円錐形をした腕の切断面をなぞる。あの日、兵助は言った。


『俺は強い。お前がいなくても生きていけるくらい強い。だから、せめて身体だけは、お前がいなくちゃ生きていけないようにしてくれ』


 ふと兵助が投げ出された薔薇に目を留める。

「あの日流した血の色に似てる」

 そう、烙印のような業罪のような甘美なあの日の記憶に似ているのだ。

「三郎」
「何だ」


「俺はもう、お前がいないと生きてはいけない」


――

 ぐだってきたのでいい加減切ります。溺れ合う鉢くくがマイブーム。甘くないとか言いつつ端から見てたら凄まじいまでの馬鹿っぷるな鉢くくが愛しい。監禁系の三郎は現パロでも一人称私が、ちょっといっちゃってる感があって好きです。






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