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「はなこちゃん、家まで送ってくよ」

3対3の飲み会、いわゆる、合コンの帰りだった。
女友達と、逃げるようにして会場を後にしたのに、駅の改札前で追いつかれてしまった。

「あ、大丈夫です、電車にさえ乗れば、駅から近いので。ひとりで帰れますから」
「そうなの?じゃあ俺、寄ってっちゃおうかな」

墓穴を掘ってしまった。
この男の人、第一印象から、軽い感じだなぁとは思っていたけれど、ここまで厚かましいとは。

「はなこ、ウチの彼氏が車で迎えに来てくれることになったからさ、一緒に乗ってきなよ」
「え、ほんと? ありがとう!」

友達の助け舟により、なんとか窮地を脱した。
合コンの男も、ちぇっ、と舌打ちをして、改札をくぐっていった。

友達の彼氏の車を待ちながら、今日はハズレだったね、と、先程までいた男の悪口で盛り上がった。




こんなはずじゃなかったのになぁ。

印刷室でコピーをとりながら、はなこはため息をついた。

社会人になったら、彼氏ができて、同棲を始めて、自然と結婚する流れになる、と踏んでいたのに。
現実は、甘くなかった。

期待していた新人研修での出会いは無く、
配属先の先輩男性は、既婚者かワケあり。

出会いを求めて合コンに参加しても、昨日のような有様だ。

合コンで私に好意を寄せてくるのは、好みのタイプからかけ離れた男で、
こちらがいいなと思った相手とは、連絡先を交換するのがやっとで、その後の進展はない。

所詮、自分がその程度の女だということだろうか。


もう一度、深くため息をついたところで、ポケットの中のスマホが震えた。

「昨日は残念だったね。来週の金曜の夜、空いてる?飲みに行こ!」

残りのコピーの枚数を確認し、素早く「行く!」と返事を打った。

もう、合コンでの出会いに期待はしていない。

が、週末に、暗くて冷たいアパートに一人で帰るよりは、いいかなと思えた。


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