※余裕でR-15
「男の子だもん」の直後
結局のところ。
ゼロスが「夜の主導権」にこだわる理由は、自分とロイドの歳差にあるのだ。言うまでもないがゼロスは成人済みのれっきとした大人であり、ロイドはまだまだ「少年」に分類される。これでもし相手が(ありえないだろうが)クラトスやリーガルのような、年上で体格も自分より大きいのならまだ許せるかもしれない。しかし、同部屋になったときに発覚したのだがロイドはゼロスが思っていた以上に華奢で、諸々の理由から肌が白い。本人はコンプレックスに感じているそうだがゼロスは純粋にそれを綺麗だと思った。むしろロイドを好きになるきっかけとも言える。もともと普段なガサツな態度に比べ、そういう「可愛らしさ」というか「儚さ」とかのギャップに魅力を感じていたのだ。
それがどう転んだのか。ロイドはゼロスを「可愛い」と言いはじめた。「いや可愛いのはお前だろ」と反論する前にセクハラまがいのことをされるし、(何故か)声がやけに色っぽいからそこにまたギャップ萌えを感じてしまうし。しかしどうしても歳差が気になる。「大人のプライド」という理不尽な感情が邪魔をして、素直になれない。
正直に言おう。ゼロスは先程のロイドとのもみ合い(?)で精神的にも肉体的にもかなり興奮していた。
ゆえにリアルタイムで情事に流されつつあるのだ。
「っはあ……ロイド、まじ勘弁し、」
脱ぎかけた衣服が擦りあう音や、体に乗り上げてくる彼の温度に頭が狂いそうになる。ゆっくりと顔を近付けてきたロイドと至近距離で視線が絡み、咄嗟にゼロスは顔を背けた。間違なく父親譲りの深い野獣の目。これも無意識にやってのけるからロイドはタチが悪い。
「ゼロス………」
こらこらこらこらけしからんぞロイド。そんな色っぽい声どこから出してるんだ。
ゼロスの心の叫びも空しく、ロイドは無防備に晒された彼の唇にもう一度口付けた。同時に右手がゼロスの腹を這い、冷たいベルトの感触を感じながら服の下へと侵入していく。下腹部を這う指にゼロスがか細く声をあげれば、開いた唇からロイドの舌が入りこみ十分すぎるほどゆっくり、そしてたっぷり口内を犯し始めた。不意打ちのように舌の裏筋を舐められてゼロスはぞくり、と体が震える。零れた互いの唾液も気にせず、少しずつ少しずつゼロスを追い詰めていくロイドはまさに肉食獣のよう。ゼロスもまたそんな彼に情熱的に迫られ、体の力が抜けていく自分を感じていた。
(あ…………やっべえ………何か……すげえ気持ちいいんだけど……)
技術があるわけでもないのに。ゼロスは確実に行為に流され、何だか「その気」になっていた。これは単にロイドに対する恋慕の思いが、野性的なロイドの指戯だったり舌戯を敏感に感じてしまうだけなのだけど。
「ろ…ロイド……ちょ、…そこは…、ひっ…あ!」
ロイドの細い指が、先端へと触れた。これもまた、丁寧に潰されたり、時にキツく握られたりと、強弱をつけて可愛がられるが羞恥やプライドのためにゼロスは必死に声を抑える。(そういう態度をとられると妙に悪戯心がわくのに、彼はそれを知らない。)しかし裏筋をじりじりゆっくりと撫で上げられ、これにはさすがのゼロスも悲鳴をあげた。
「あ……あうぅ…う、や、やめっ…!!」
「その割りにはかなり濡れてるけどな?ゼロス」
「そ、れは」
楽しそうに、また意地悪そうに微笑むロイドだが、やはりゼロスの乱れ様を目の当たりにした今、少々余裕がないようだ。紅い髪が淫らに広げられたシーツはまるで薔薇の海のよう。快感に歪むその表情も、上気した頬も、うっすらと目尻に浮かぶ生理的な涙も、すべてがロイドを追い詰める。
まあ要するに、互いが互いに欲情しているのだ。
不意に、ゼロスがロイドの空いていた方の腕を掴む。丁度ゼロスの脇腹の隣りあたりに突いていたその左手は、やはりというか、かなり熱い。何だ。こいつも照れてるじゃん。そう思えば急に愛しさが込み上げて、その手に指を絡めた。下の方の愛撫に夢中になっていたロイドは、目をまるくしたがすぐに目を細めて強くその手を握り締める。
その間も行われていた下腹部への指戯は、相手が「本気で好きな人」であるため、今まで感じたことのない快感を生み出した。むず痒いそれは腹の内側の方から、甘い電流となって全身へと伝わる。
「っ……ふ…あぁあ」
自然と漏れてしまう艶のある声。
うっすらと涙の溜まった目でロイドを見上げれば、彼もゼロスを見ていた。呼吸を乱した自分の顔を視姦されているようでかなり恥ずかしかったが、あまりの相手の熱っぽい視線に今度は目が逸らせなくなる。
(あ、やべ………)
増大してきた快感にそろそろ昇天の予感を感じた。最上点への階段を徐々にのぼりつめた彼は、切なげにかつ甘い声でロイドに訴える。
「ロイド……も……俺……出…る―――っ!」
襲いかかるであろう快感の嵐にゼロスが目をつむった時。
「……………あっ…?」
ぴたり、とロイドの指が止まった。
「なっ……止めるな…馬鹿………!!」
「だって俺馬鹿だもん」
「はあ!?え……ちょ…ああぁっ!」
再開される悪戯。
意地悪く微笑むロイド以外に確信犯などいない。
(こ…………こいつ………まさか…)
相当なサディスト………だったりして………
顔は赤いゼロスも心は真っ青な事実である。
「っあ……や、やだ………あうぅ……やめ」
「やめてほしいのか?」
「あ、違っ、やめてほしいのはソレじゃなくてだな、その…寸止……っ」
「ん?何、ゼロス……」
体では容赦なく責め立てるくせに、声がやけに優しいのが癪だ。
(くっそ…………こんのガキっ……!!)
「ろ……ろいど、おねがっ………、」
「ははっゼロスって本当寝てる時は素直で可愛いよなあ……?」
「ああう…!」
指だけで肉体的にも精神的にも目茶苦茶にされた挙句、今度は変なギャップで攻撃されるし。何だその甘い声は。サディストならサディストらしく、本格的に苛めてくれれば………何というか、うん。こちらもこんなむず痒い感覚にはならなかったのに。
(やっべ………癖になりそ………っ)
顔には出さないが相当ロイドに惚れ込んでいる彼は、何をされても快楽へと変わる。
一番、駄目なことだったのに。「何をされてもかまわない」 そう感じる恋愛こそ恐ろしいものはないのに。依存こそ、一番自分を見失ってしまうやり方なのだ。
ただ。
そうやって愛だ恋だに墜ちていく自分自身も心の奥底では「それでもいい」と感じているはず。相手がロイドなら、優しく可愛がられるのも、痛くされるのも、気持ちいいし愛しいとしか思わない。
だから。
「全部やるよっ………」
「………ん?」
「お前になら、俺の全部やるからっ……!!」
そう言えばロイドは驚いた顔をした。見開いた目はゼロスの水色の双方を見つめ、そして本当に愛しそうにくしゃりと笑う。
「俺はとっくの昔から、ゼロスに全部あげてるよ」
不覚にも、泣きそうになった。
俺はお前を愛しすぎてる
エロいのか切ないのか甘いのか。