あまりの泣き出しっぷりにびっくりしている私達には気付かず、一生懸命ロイドはベッドによじよじと登りクラトスに抱き付く。


「うえぇん…ごめんなしゃいぃ………おとーしゃ、ごめぇえ…」
「…………ロイド?」
「ろ、ろいどのせいで、おとーさん、1回しんじゃったからぁ……あ…あ…」
「お前のせいじゃないだろう」
「でもろいど、悪者とたたかえなかったもん………」



父親の首に小さな腕を大きく広げて抱き付くロイドは、相変わらずわんわんと泣いている。そんなロイドにクラトスは少々戸惑いながらも呆れたように溜息をついて笑った。ぎこちなく無骨な手をロイドの頭にそっとおき、くしゃりと優しく撫でる。壊れないように、そっと。







普段からロイドにも私にも表情の変化を見せない彼が


心底愛しげに瞳を細めて、ロイドを見つめていたのだ。



「…………、………」


声が出なかった。




「アンナ?どうかしたか」

私がはっとしたころにはクラトスはいつものとおり無表情な顔のまま、私を見つめていた。当のロイドも泣きやんで「どーしたのー?」と私に可愛い手を伸ばしてくる。


「ううん……なんでもない」



だから私はゆるゆるとかぶりをふって、ロイドと頬を撫でた。こうするときゃっきゃっと跳ねて喜ぶ私の息子。そんな私を見てどう思ったのだろうか、クラトスは私の腕を掴んで


「え?って、ちょ、むぎゃ」


無理矢理ベッドに引きあげてロイド越しに片腕で私を抱き締めた。


「えぇええクラトススス、貴方何考えて」
「昼寝だ」
「きゃっきゃっ、ろいどおとーさんとおかーさんに挟まれてるー!くるしー!!」


そう言いながらはしゃぐ息子とは違い、私は珍しく赤面していた。


そんな私のことなど知らず、もそもそとクラトスは横になりロイドを真ん中にして(いわゆる川の字というヤツで)寝ようとする。


「はあ……どうすんのよ……今から全員で昼寝なんてしたら、絶対夜寝れなくなるわよ……」
「たまにはいいだろう」


妙に機嫌がよさそうな声で彼はそう呟き、私をロイドごとむぎゅ、と抱き枕のようにしては頬をすりよせて笑う。


「 ひとりじめ、だな 」













誰が悪者でもない。


だけど私達には 「 敵 」 がいる。


だから戦うしかない。
殺すしかない。
もうそれは気にしていたらキリがないことだ。

ただ昔と違うのは、

その命の重さに、クラトスが気付きはじめたことだろうか。



どんな「敵」にも愛する人がいて
守らなければならない場所があって
大切にしている家族がある。


だって自分もそうだから。






『 何故……何故お前は泣くのだ。まだ殺し足りないか?まだお前を苦しめる輩がいるのか 』

『 もうやめてよクラトス…こんなに血出てるのに………私は………私は…… 』


貴方が壊れてしまいそうで

怖いの。



『 死んじゃいやよ、クラトス 』

そう呟いて子供のように泣きじゃくりながら彼にしがみついた。
私を守るために毎日彼は誰かを傷付け、そして誰かに血だらけになるまで傷付けられて帰ってくるクラトスに、私はもう耐えれなかった。




『 …………すまない。泣かせるつもりは…なかったのだが 』
『 うー 』


優しく抱き締めてくる彼の体温に私はまた涙をこぼす。背中にまわされた彼の腕は少しずつ強くなっていく。


ほら、本当はこんなに優しくてよわいひとなのに。


彼が人を傷付けるとき豹変するのは、辛くて歪む表情を隠すためだったのに。




『 ………これからはお前を泣かせないようにするから 』
『 うん 』
『 お前を守りながら、自分も…守るから 』
『 うん 』
『 だから…………その………… 』

急にどもったクラトスに私が顔をあげると至近距離で彼は少しだけ苦笑していた。 そして照れくさそうに私を抱き締めて呟く。






『 結婚してください 』


























▼言い訳

ノン様へ捧げます。
リクエストはクラアンで「アンナさんを守りながら戦うクラトスの強さについてアンナさんの心境(もしくはときめいてしまうアンナさん)」というものでした。

すいません……全然ときめいてませんね………しかも最初の方の夫婦の会話、完全に漫才でしたね…………←


こんなのでしたらもらってやってください。



なおタイトルは恋したくなるお題様の「頑張りやな君へのお題」からお借りしました。








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