とど様へ相互記念 ー1  


薬剤研究の経過レポートに粗方目を通し終え、そろそろ休憩しようと立ち上がったときのこと。
不意に目眩がして見事なまでにすっコケた。
えぇ、そこまでは良いのよ別に。だってよくある事・・・でもないけれど、そう珍しいことでもないもの。

問題は、転んだと同時に見覚えのあるような無いような場所に出たこと。
それともう一つ。

「な、な・・・・・・」

転んだ痛みに眉をしかめながら顔を上げれば・・・あら、まあ。ドッペルゲンガーがいらっしゃるわ。

突然のことに驚いたからか、言葉に詰まってポカンとしているドッペル・・・もとい、私と同じ顔の人。それと、元親・・・いえ、違うわね。
あの長曾我部殿、私の知ってる元親じゃない。なんというか、雰囲気がもっと大人びている感じがする。
というか、周りの空気と気配と言うか波長と言うか・・・何かがずれているような。いえ、勘でしかないけれどね。
これは、なんというか・・・またと言うべきなのかしら?産まれなおしていないだけマシなんでしょうけど。

「何者だ。忍びではないようだが」

あら冷静。驚いたのは一瞬で、すぐさま警戒態勢に入られた。
まぁいきなり何も無いところから人間が・・・しかも自分と全く同じ顔かたちの人が転がり出たら警戒するわよね普通。

「我の名は毛利元就・・・そう殺気を放たないで頂きたい。騒がせたことは申し訳なく思っている。」

あーらら・・・ギッチリ眉間にシワ寄っちゃってる。せっかくの美人が台無しよ?(私も同じ顔だって?気にしちゃだめよ、そこは)
どうでもいいけど足痛い。ぐきっといっちゃった感じだわねー、これは。

「その名は我の名ぞ」
「この世界では、な。我は、こことはまた違う世界の・・・あーっもう!!同じ口調二人とかややっこしいわね!!もう、素でいくわ。私は確かに毛利元就よ、ただしこことは違う世界のってつくけどね。よろしくて?」

あ、二人とも固まった。そして天井から何かにぶつかったような音。あら、なんか気配が多いと思ったらそこにいたのね。
・・・やっぱり私の方の元親が言うとおり、いきなりこの口調は強烈すぎるのかしら?

「えーと、この場合どういう反応返せばいいんだ・・・?」
「・・・我にきくな」

一気に部屋の隅まで後ずさる元親殿と元就殿が口元を引きつらせながらこそこそと囁きあう。なんというか、よくある反応をありがとう。
これやると、大体どん引きして大混乱になって警戒どころじゃなくなるのよ。便利よね、うふふ。



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