とど様へ相互記念 ー3  


「けほっ・・・その、なんと云うかずいぶんと自由なのだな。居城は広島なのか?石見の守りもあるであろうに・・・国は大丈夫なのか?」
「優秀な兄弟達がたくさん居るもの、そのあたりは大丈夫よ」

しばらくキノコ・・・とか白目・・・とか言って咽ていたお二人。もう一度お茶をすすってようやく落ち着いた毛利殿に、思わずといった感じで若干心配そうに言われた。でも気にしない。むこうでも散々言われてるし、第一こっちではどうかは知らないけれど国主私じゃないもの。
国主に、なんて話も(兄弟間で・・・というかピンポイントで兄上から)出てきてはいるけど最近ではほとんど冗談交じりだし。(ただし定期的に本気になるから油断できないのよねぇ)と言うか私みたいなのが務めたら一気に中国総崩れよ?だって、取引に使えるとはいえ敵国の軍師をつい癖で助けようとするような人に国主が務まるとは思わない。そのあたり兄上は上手いこと手を回してると思うわ。

「ほんと身内が優秀なのは喜ばしいことよね。おかげで多少の無理難題は通せるんですもの」
「・・・そちらの毛利の者がいささか気の毒に思えてきたのだが」
「気のせいよ。というか、ウチはほとんどこんな感じなんだけど?」

ちなみに無理難題の源流は父と母にあるハズ。・・・私じゃないわよ?
それに一番気の毒なのって兄弟たちじゃなくてあっちこっち飛び回ってる忍の皆さんだもの、おほほほほ。特に世鬼兄弟(特に兄)は最近胃の調子が心配なくらい色々やってもらってるのよね。帰ったらちょっとだけ労ってあげようかしら。・・・だめだわ、勘繰って余計に悪化しそう。なんて言ってたらまたしても天井から何かぶつかったような音。ひょっとして世鬼の方なのかしらね?

「何をやっておるのだ・・・」

毛利殿からは心持ちじっとりとした、というか呆れた視線を送られたけど、長曾我部殿は微妙に目を逸らしているというか居心地悪そう。
どうやら忍の方々に規格外のお仕事させているのは彼も一緒のご様子ね、うふふふふ。

「まったく・・・こちらとそちらは随分と人も環境も違うのだな・・・」
「ま、それはそうよねぇ。私達一人とってもこんなにも差があるんだもの。色々と違っていても当然じゃなくて?」
「甘党なのは同じみてぇだがな」

話しながらもしっかりちゃっかり完食されたカステラの皿を見てにっぱりと笑った長曾我部殿にからかうように言われたけど、だって仕方ないじゃないの。美味しいんだもの、ねぇ。毛利殿に同意を求めると、こっくりと一つ頷いたあとで無言でおかわり催促してる。なんかこの二人見てると和むわ〜。

ほんと、毛利殿ってば私とは大違いよねぇ。変に擦れてないって言うか、まだ純粋さというか可愛げがあるというか。いや、総合計年齢が≪何者かの陰謀により削除されました≫歳な私と比べるのが間違いなんだけどね・・・裏社会に生きていた私には微妙にまぶしい。

というか本当に美味しそうに食べるわね毛利殿・・・撫で繰り回したいけど、やっぱりだめよね。自重自重。

「・・・顔がにやけておるぞ」
「うふふ、だって二人とも可愛いんですもの」
「・・・大の男が可愛い言われてもなぁ」

あらいやだ、そんな明智殿を見るみたいな目で見ないでちょうだいな。



「なんてことがこの間あったのよねー」
「オーウ、不思議なコトあるものデスネー。でも、チャント帰ってこれて良かったヨ」

所変わってこちらザビー城。勿論私の愛すべき友のいらっしゃる、私のもと居た世界の方のね。
結局あのあと1時間くらい3人で他愛ない話をしていて、気がついたら私は部屋に倒れていた。相当疲れていたと思われたのか、その後過保護な弟の手により休暇を取るために半強制でここに送られちゃったのよね。

白いテーブルに並べられた華奢なティーカップに、何故かほうじ茶を注ぎながら話を聞いていたガタイの大きな友人は、胡散臭い外見と見合った口調で和やかに相槌を打って微笑んだ。こういう所は流石神職、穏やかな微笑が(微)妙に様になってるわよね。

「ほんと、すぐ帰ってこれる気はしてたけど・・・何でこうポンポンと異世界にとんじゃうのかしらね?」
「元就サン、そう言っちゃダメよ?コレも主のお導きカモしれないのネ?」

こてっと小首をかしげて困ったように笑う教祖様に苦笑いを返したそのときだった。
どちゃっガシャンと何かの落ちる音と同時に、小さな「いったぁ・・・」と言う声。音源の方に顔を向けるとそこには何故か例の野菜の上に元親・・・いえ、この雰囲気ひょっとして

「長曾我部殿・・・?」
「そーいうアンタは・・・あん時の毛利殿か?」

あーもうやっぱりなのね・・・

「・・・ほんと何でこうポンポンと異世界にとんじゃうのかしらね?」
「いや、それは俺も聞きてぇ」
「コレも主のお導きデース・・・」

潰れた野菜にしょんぼりしながらもお茶の用意を始めたザビーの肩を叩いてやって、とりあえず長曾我部殿をテラスへご案内。

結局彼も数時間で無事に帰ることができたんだけど・・・その間に元綱が乱入したりこっちの元親が乱入したりしてひと悶着あった話は・・・・・・またの機会に。

とりあえず、疲れたわ・・・。

| 章終

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