ゴウルカ&ユダキラ14

保管庫(SB)


『クリスマスの夜、貴方と甘い時間を過ごすだろう』 ゴウルカ前提キラ→ルカ+ユダ〜特別な夜シリーズ10

街中がイルミネーションで彩られる。人々はなんとなく浮足立ち、幸せそうな笑顔で光の中を歩いていく。
その人の波の中に混じりながら、ゴウはふと隣にいる恋人を振り返った。
「なあ、ルカ。…その、もうすぐでクリスマスだが、何か欲しいものはあるか?」
「……」
しかしルカはぼーと前を見つめて、無反応。ゴウはなんとなくがっかりしながら、もう一度「ルカ」と呼びかける。
先程より強く呼びかけたからだろうか、流石のルカも気付いたらしく瞬きを繰り返しながらゴウを見上げる。
「ああ、悪い。どうかしたか?」
「…お前こそどうしたんだ。なんだか、心ここにあらず、という感じだな」
指摘すれば、ルカは申し訳なさそうな顔をする。少し落ち込んだ様子で「怒っているか?」と聞いてくるので、ゴウは思わず苦笑してしまった。
「何故俺が怒るんだ。ただ、悩み事でもあるのかと思っただけだ。何かあったのか?」
男らしい爽やかな笑顔で見つめられて、ルカも少しほっとした様子を見せる。緩めた表情で前に向き直り、再び揃って歩き出しながらルカは口を開いた。
「いや、悩み事ってわけでもないんだが…最近、ユダが妙で、な」
「ユダが?どんな風に?」
「なんとなく…浮足立っているように見える。少し前まで落ち込んでいるみたいだったのだが」
それで何かいいことがあったのか、と聞くのだが、毎回上手くはぐらかされてしまうようだ。ルカはそれが不満らしい。
「まあ、ユダにも色々あるのだろうさ」
「…親友なのだから、教えてくれても良さそうなのに…」
「いつか必要になれば教えてくれるだろう。いいことなら尚更だ。ユダを信じて待つしかないな」
ぽんぽん、と頭を軽く叩いて諭せば、それもそうだな、とルカも肩を竦める。それから、あ、とした表情になり、ゴウへと視線を向けた。
「そういえば、さっき何か言っていなかったか?悪かった、聞いていなくて」
問いかけられ、ゴウは「あー」と頭を掻く。こういうことは慣れていない。しかも、こう改まって聞くのは気恥ずかしい。
結果、少し頬を染めて視線をわざとルカから逸らしながら、ゴウは質問を繰り返す。
「その、もうすぐでクリスマスだから、ルカは何か欲しいものがないのか、と思ったわけで…俺があげれるものなら、何でもやるぞ」
ルカは、少し驚いたような表情をした。クリスマス、と唇が動き、すぐ笑顔になってゴウに少し近付く。
「そういうゴウは、何かないのか?」
「俺は…別に。それよりお前が先だ」
「私も何もないよ」
視線を感じて、ゴウはつい隣に顔を向ける。するとそこではルカがとびっきり甘い瞳で、ゴウをじっと見ていた。
「お前がいてくれれば、それでいい」
…俺を悶え殺す気か、この天使は。
可愛い恋人の可愛い言葉に、ゴウは頭がくらくらするのを感じた。


「ユダさん、何か悩んでいるみたいだな」
ストーブがついた談話室。そこでソファに腰掛け外を眺めていたユダは、背後からかけられた声に視線だけ向けた。
するとその先には予想通り、にこにこ笑っているキラが立っている。なんだか機嫌が良さそうだった。
「どうかしたのか?」
ソファの背もたれで腕を支えて、キラはわざと耳元で妖しく囁く。ユダは鬱陶しげにそれを払いのけ、別に、と素っ気なく返した。
「冷たいな、恋人に対して」
「キラ」
剣呑に瞳を細めて牽制するが、キラは余裕の表情で「大丈夫だよ」と肩を竦める。
「冬休み初日で皆出掛けている。誰も寮に残ってなんかいないよ」
「だからといって、そういうことをこういう所で言うな」
不安そうに周囲を見渡し、ユダはもう一度キラに念押しをする。キラは納得していない顔で、ユダをソファ越しに後ろから抱きしめた。
「じゃあ、俺とこうするの、嫌いなわけ?」
「…そういうことを言っているんじゃない」
振り解こうとして、しかしその温もりについユダは手加減してしまう。キラはそんなユダを分かっているから、冷たくされても全然平気なのだ。
「別にいいじゃないか。誰にばれても、俺は構わないよ」
ユダにくっついたままその頭を撫でれば、ユダは不満げに「俺が構うんだ」と漏らした。
キラの眉が吊り上がる。
「もしかして今の貴方の悩みは、それかな?」
「……」
「無言は図星ということか」
黙って固まるユダから離れて、今度はその隣に腰掛ける。じっとユダの横顔を見つめながら、キラは本当綺麗だなあこの人、と改めて自分の恋人の美しさに酔いしれた。
ユダは睫毛を震わせ、そっと息を吐く。
「…ルカが、何か勘付いているみたいで。最近何かあったんじゃないのか、と聞いてくるんだ…」
「貴方的には、ルカさんにばれたくないの?」
「…複雑だな、ここら辺は」
言葉通り、ユダは微妙な微笑みを見せる。確かにキラはルカのことがもともと好きだったし、真面目なユダとしては考えずにはいられないのだろう。ルカの反応がどんなものかも気になるのかもしれない。
キラはユダに腕を伸ばした。その頬に優しく触れて、そっと唇に優しいキスを落とす。
「俺に後悔はないよ。…だけど、貴方にそんな顔をさせるのは、申し訳ないと思っている」
「キラ…」
「だけど俺が今、確かに好きなのはユダさんだから。それだけは、忘れないで」
真剣な顔で、真剣な言葉を伝える。ユダの触り心地のいい頬を指で往復しながら、キラは次の瞬間ふっと表情を崩し、にやりと笑った。
「まあないと思うけど、もしこれでルカさんがユダさんを『泥棒猫!』とか言い出したら俺は間違いなくルカさんを殴るね。そうしたらゴウさんにぶん殴られそうだけど」
ゴウさんの拳は半端なく効きそうだよな〜俺が不細工になっても愛してくれる?とお茶目に聞いてみれば、ユダは噴き出して「馬鹿」とキラを軽く小突いた。それからキラの言葉を真似してみせる。
「まあないと思うけど。もしそうなったとしても愛しているよ」
「それを聞いて安心した」
子供のように満面の笑みを見せれば、ユダも少し落ち着いたらしい。彼の体から力が抜ける。その隙を逃さず、キラはユダを抱え上げてそのままがっしり抱きしめた。
「でもユダさんはもっとルカさんを信用してもいいと思うな。何といっても、俺の愛して止まない恋人の親友なんだし?」
「…素直に、俺の親友だから、と言え」
「だって〜それじゃあ俺は絡めないじゃん。詰まらないだろ」
「でもそうだな、一理ある。ルカは俺の親友だから、きっと大丈夫だな」
「え、無視?」
くすくす笑いあって、どちらともなく相手の額に自分の額をくっつける。
ユダはそのまま、安心した顔で「ありがとう」と述べた。
「少し、ナーバスになっていたみたいだ。…近々、ルカに言うよ。俺達のこと」
「ん」
そしてそっと、唇を重ね合わせる。優しいキスの味に、二人の心が満たされる。


この時は、誰も知らなかった。
まさかこの後、寮にゴウとルカが帰ってきて、キラとユダが抱き合っている所を目撃することになろうとは。

ああ、これは運命の悪戯か?それともクリスマス前の、神様のプレゼントなのか?





結局ゴウにもルカにもばれて、ユダは恥ずかしくて仕方ない思いをします。しかもそのままクリスマスを二人で過ごせるように、キラとユダの同室の生徒(つまりパンドラとシヴァ)を上手く言いくるめて一晩の部屋のセッティングまでされる羽目になります。おかげでキラは意気揚々としますが、ユダは恥ずかしくて仕方ない!

そしていちゃつく二組を書く私も恥ずかしくて仕方ない!

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