ゴウルカ&ユダキラ8

保管庫(SB)


『子供の日の夜、貴方にねだる』 ゴウルカ前提キラ→ルカ〜特別な夜シリーズ4


その日の寮で出た夕飯には、柏餅が付いていた。
お盆に乗せられたそれに気付いて目を丸くしたルカは、ああ、そういえば今日は子供の日になるのか、と納得する。
天井から降り注ぐ人工的な光に照らされ、それでも美味しそうに輝いている餅を見つめながら、ルカは思わず微笑んだ。


「ん?ルカ、柏餅を食べないのか?」
毎日の習慣でルカと食事を共にしていたユダは、彼が柏餅を残したまま「ごちそうさま」と手を合わせたことに気付いて声を上げた。
ルカは、食堂のおばさんに貰ってきたらしい、ラップで餅を包みながら「ああ」と返事をする。
「…ゴウに、持って行ってやろうかと思って」
少し照れたように微笑んで、彼は愛おしいものを見つめるように目を細めた。
ユダはその一言で大体のことを把握する。
今は連休の真っ最中なのだが、どうやらゴウはまた剣道場で夕飯後の自主練習に励んでいるらしい。自主練習の時、彼はひどくお腹がすかせるというので、その差し入れなのだろう。
仲がいいな、とユダは思う。
ルカはゴウと付き合っている。昔からのルカの親友であるユダは、ルカが彼に片思いをしている頃からこの恋を知っていたし、相談も受けていた。二人が両思いになったことを知った時は本当によかったと思ったし、現在も以前と変わらず二人の仲を応援している。
だから今も、隠すことなく幸せそうに笑うルカを見て、喜ぶと同時に、しかし惚気られたような気がして少し困ったように微笑んだ。
「ルカ、幸せなのはいいことだが、それは惚気なのか?」
意地悪い返事をしてやれば、ルカは何度か瞬きをし、それから顔を真っ赤にして、少し戸惑うような表情をしたが、それから微かにまた笑って見せた。
ああ、この親友は今とても幸せであるらしい。ユダは本気で微笑ましくなると同時に、羨ましくも感じた。
その時、二人は背後から聞き覚えのある声を聞く。
「へえ、ゴウさんって、柏餅が好きなのか?」
振り返れば、キラがそこにいた。これから食事をするのか、皿をいくつも乗せたお盆を両手に持って立っている。
人と接することをあまり好まない彼は、滅多に自分から声をかけることはしない。だからこの時、キラがそのまま自分達に向かい合うようにしてテーブルについたのにユダは正直驚いた。
キラはそのまま箸を手にして、話を続ける。
「ゴウさんが柏餅を好きだったなんて、少し意外だったな。でもそれなら今以上に仲良くなれそうだ」
「どういうことだ?」
ユダは素直に首を傾げた。
キラは一度視線をルカに流してから、目を細めて笑う。
「俺も柏餅が好きなんだ、実は」
キラの言葉に、ルカが小さく肩を震わせる。ユダはそれには気付かず「そうなのか」と単純に驚いた。
「それこそ、意外だな。確かゴウは柏餅が好きというよりは、餡子が好きだったかと思うが…」
「へえ…でも柏餅は美味しいからな。俺も、もう一つ欲しいくらいだ。…ねえ、ルカさん?」
キラが、笑う。話の流れでユダも隣のルカを見る。
ルカは、曖昧に笑っていた。
「…そうだな、柏餅は美味しいな」
ユダは、その時違和感を覚えた。何が、というわけではないが、不安が胸を締め付ける。
ルカは一度顔を伏せて、それから悪い、と唐突に告げた。
「…私はそろそろ先に失礼させてもらう」
申し訳なさそうに何度も謝りながら、ルカは立ち上がった。ユダは彼の突然の行動に驚き、戸惑ったが、それでも彼を引きとめるようなことはしなかった。
キラと二人でルカを見送り、ユダは再び前に向き直る。そうして目に入ったキラは、もう彼の姿は見えないというのにまだルカが行ってしまった方向を見つめていた。
「……」
ユダは何ということもなく不安に襲われて、そして自分のお盆の上に乗っている手つかずの柏餅に手を伸ばした。
「キラ」
呼びかければ、横を向いていたキラの顔が正面を向く。何?と先程とは違う自然な笑みでユダを見た。
そのキラの目の前に、ユダは自分の分の柏餅を差し出した。
「…ユダさん?」
「もう一つ、欲しいのだろう?俺の分でよければ食べてくれ」
キラは予想外だとでも言うように目を思いっきり丸くした。何度かユダと柏餅を見比べて、しかし最後には口元を緩めてそれを受け取る。
「ありがとう」


キラの微笑みが寂しそうに見えたのは、自分の気のせいだとユダは思いたかった。


 終


 何故か春雪最初、寮の朝ごはんに柏餅を出していました(・∀・)(朝から重いな!)

 そして今回ゴウより出張っているユダさん。…ごめんねゴウ!








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