恋人verL(恋敵11)

保管庫(SB)


『恋人‐version.L』 (ユダ+ゴウ)→ルカ〜恋敵シリーズ8

ガイの場合。
「ユダとゴウのどっちの方が好きかって?うーん、どっちも好きだけど、やっぱりゴウかなー。昔から一緒だったから気兼ねないし、一緒にいると気持ちが楽なんだ!」

シンの場合。
「どちらにより好意をもっているか?そうですねえ…ユダもゴウも素敵だと思いますが。…強いて言うならユダでしょうか。博識ですし、尊敬しています」

レイの場合。
「ユダとゴウですか…難問ですね。僕は…ゴウですかね。ゴウは素直に感情を出してくれて、僕のご飯も本当に美味しそうに食べてくれますから。気持ちが温かくなります」

シヴァの場合。
「そんなのユダに決まってるじゃないか!何でも出来るし、誰にでも優しいし、かっこよくて綺麗で素晴らしい!!誰から見ても完璧な天使のユダの方がいいのは当然だろ!」

サキの場合。
「あー?んー…ユダも好きだけど、俺はゴウだな!男らしくて、しっかりしてる所はかっこいいと思うぜ。まあちょっとおっちょこちょいだけど、そこがまた笑えるっていうか」

ユリの場合。
「ユダ殿もゴウ殿もそれぞれいい所をお持ちですが…ユダ殿でしょうか。皆に平等に優しく、細かい所まで気を配れる所は見習いたいと思っています」

パンドラの場合。
「ゼウス様に勝る者は勿論いませんが、ユダ殿でしょうか。どんな困難にも屈しない強さと、自分の理想を貫く勇気には、憧れてしまいます」

カサンドラの場合。
「そうですね、ではゴウ殿で。躊躇いなく自分の感情を他人にぶつけられるその強さが羨ましいです。まあ、勿論ゼウス様以上に優れた者などいませんが」


やはり。
分かっていたことだが、個人個人で好みは違って、個々によって惹かれる対象に差が出るらしい。
ルカは、つい溜息を零した。
無駄だと理解しつつ、しかし少しでも参考にならないかと思ったが、やはり無駄だった。もう一度、溜息が零れる。
「……どうしようか」
ルカは、ユダとゴウの二人に同時に告白をされた。完全に思いがけない展開…というわけでは実はないが、しかしそれでも、気持ちが沈むのを止められない。
ルカは本当は、なんとなく気付いていたのである。ユダとゴウが自分に寄せる、特別な感情に。それでも知らない振りをしていたのは、有り得ないと自分に言い聞かせていたルカの謙虚さと、そして、もしそうなった時自分はどうすればいいのかという問いかけの、答えがまだ出ていなかったからだ。
ルカにとって二人は友であり、仲間であり、しかしそれ以上でもそれ以下でもない存在だ。そんな二人のどちらかを選ばなくてはいけないのだろうか。どっちも同じくらい、ルカにとっては大切なのに。
「…そうして考えているうちにドツボにはまった、というわけだが」
漏らした独り言に、情けなくなる。
例えばその件について考え出せば、最後に行き着くのは「そもそも愛するとは、どういうことなのだろう」という疑問なのである。
キスができれば、相手を愛しているということなのだろうか。しかしルカはユダともゴウともキスをしている。
いやいや、正確には奪われたわけだが。…ゴウのはなんだか情熱的だったが、ユダのは優しかったな…キスの性格と日頃の性格は異なるのだろうかって私は何を考えている。いや、特に深い意味はない。いやいやいやいやいや…うう、なんだか頬が熱い。
結論として、キスを基準にしてはルカの中で答えは出ない。では、それ以上をできればいいのだろうか?
「……いや、無理だろう。無理」
ああ、考えるだけで顔から火が出そうだ!考えたくない!
そうして沸騰しそうな体温と格闘して、数日間。そろそろ、答えを出さないといけない気がする。
でも、どうやって?


ここ数日、ルカは朝食も昼食もわざと皆と時間をずらして食べさせてもらった。ユダともゴウとも顔を合わせないためのルカなりの工夫である。そうしてその日の夕食も同じように皆とずれてとった後、部屋に戻ったルカは、そこで思いがけない人物と会った。
「やあ、ルカさん久しぶり」
にこやかに笑いかけてきたのは、キラだった。予想外の出来事に、ルカは一瞬固まる。
「…キラ?」
「そうだけど」
「…何故、天界に。というか、何故私の部屋に?」
「そんなの、ルカさんと誰にも邪魔されずにゆっくり二人だけで話したかったからに決まってるだろう?」
にやり、とキラの口端が吊り上る。どこまで本気なのか分からないキラの言葉に、ルカは困惑を隠せない。
部屋の中を見回してみたが、キラの弟であるマヤの姿はそこになかった。正真正銘、二人だけで話し込むつもりらしい。
「それくらい、ここまでしなくてもいいと思うが…」
地上から天界に戻ってきて、溺愛しているマヤを遠ざけて、誰にも言わないままルカの部屋に侵入して。そこまで彼がする理由が分からず、つい苦笑をして見せれば、キラは思わせぶりに瞳を輝かせた。
「そう思ってるのはルカさんだけじゃないか?…約二名が、二人っきりなんて許してくれなさそうだし」
ルカの表情が凍る。それを確認して、キラはやれやれと肩をすくめた。
彼はそのまま近くの椅子に腰掛ける。立ち尽くしているルカに気付いて彼が視線を寄越せば、ルカも緩慢な動作で椅子を引き寄せ、そこに座った。
向かい合うようにして腰を落ち着けた二人の内、先に言葉を発したのはやはりキラだった。
「…ユダさんとゴウさん、とうとう言ったんだ」
「……」
ルカは何も言わない。しかし、キラはそれを答えと受け取ったらしい。ふーん、と淡白な声で相槌を打ち、ルカを見た。
「で?ルカさんはどうするつもり?」
「…分からない」
「分からないのは、どうして?」
ずばりとしたその質問には、ルカは口ごもった。「どうしてって…」と口ごもり、また黙る。
キラはしばらくルカからの返答を待ったが、やがて天井を仰いだ。
「そーんなに迷うことないと思うけど?まあ暗い表情をしているルカさんは、なかなかそそられるけどさ。よりセックスが上手そうな方を選んどけば?あ、それだとゴウさんに勝ち目ないかも」
「キラ」
「あ、怒ってる。その顔も、俺は好きだな」
「茶化すな」
鋭い視線で、責めるようにキラを見るルカに、キラは観念したように「茶化してなんかないのに」と両手を挙げた。降参、のつもりだろう。
「じゃあ、話は簡単だ。より愛している方を選べばいいさ」
さらりと述べられた言葉。
愛。それが一番簡単だ。だけど。
「…愛、なんて分からない」
搾り出すような声には、切なさが混じっていた。項垂れるルカを、キラはただ見つめる。その無言の視線に堪えられなくなって、今度はルカがキラに問いかけた。
「キラにとって、誰かを愛するというのは、どんな感じだ?」
「…俺のを参考にしても、無意味じゃないか?そういうのって」
キラの言葉は、正しい。他人と自分の感情、思考、感じ方、どれも同じものは一つもない。ルカははっと表情を崩し、そして穏やかに、疲れたように笑って「…それもそうだな」とまた俯いた。
そんなルカに、キラはふう、と息を吐き出す。呆れ、というにはとても軽く、そして優しい溜息だった。
「ルカさんは、真面目に考えすぎなんだよ。愛するって難しいことのようで、実は結構単純だと思う。例えばさ、ずっとその人のことを考えてしまうんだ。それで自分が幸せになったり、辛くなったりする。相手がどうかとか関係なくて、ただ思うだけで感情が揺さぶられるんだ」
耳に届くキラの声は、今まで聞いた中で一番落ち着いた、温かい声だ。ルカの顔が上がる。
「それで相手のために何かしたいって思うんだ。報われなくても、その人が喜んでくれるだけで気持ちがいっぱいになる。傍にいるだけで満たされて、それだけでいいって思える。…だけど、それとは対照的な欲望も、胸に生まれる。その人に触れたい、その人と気持ちよくなりたい、その人を自分のものにしたいって」
「キラ」
「…そんなの全部ひっくりくるめて、愛だと俺は思ってる。まあ、ほんの一例だけど」
そうして、キラはルカに近付く。ルカの目の前に立って、彼がしたことはルカをそっと抱きしめること、だった。
下心を感じない、強いて言うなら親が子を。いや違う。子が親を包むように、精一杯強がって、背伸びして、その人を包もうとしているような抱擁だった。
「さっきも言ったが、ルカさんは考えすぎだ。何も考えないで、感じればいいと思う。…無理だけは、するな」
「キラ…」
名を呼んで、そしてルカは不思議と気持ちが晴れるのを感じた。
よくよく考えれば、キラは昔からルカにはよく懐いていた。すぐ強がる彼だけど、ルカの言うことは不思議と聞き入れることも多く、何かあれば頼ってくれたのだ。
そんな彼が、気弱になっているルカを助けようと頑張ってくれている。その気持ちが、嬉しい。
それに。
「…キラ、誰か愛する人がいるんだろう?」
そう指摘すれば、ルカを抱きしめる腕がぴくりと動く。少し離れて、キラは驚いたような表情で「なんで分かったんだ?」とルカを見た。
「分かるさ。愛を語るお前は、とても穏やかだったから。きっとその愛する人を、想っているんだろうなってね」
ああ、そしてその温和さが愛なのだ。キラが見せた、その感情が。
「ありがとう、キラ。…なんとか、なりそうだ」
ルカが、笑う。花が開くように、美しく、優しく。
キラはそのルカの笑顔で満足したのか、あっさり「そっか。なら、よかった」と納得して見せて、ルカから完全に離れた。
そして彼は部屋のドアに足を向ける。
「それじゃあ、俺はそろそろ行くよ。マヤも待ってるだろうし」
もう?と思ったルカだが、マヤの名を聞いてそれもそうか、と思い直す。見送りの為ドアまで足を運べば、そこでキラに止められた。これ以上の見送りは不要、ということだろう。
「色々すまなかったな。世話になった」
「いえいえ、これくらい」
「それじゃあ、気を付けて…あ、そうだ。キラ」
廊下を進む彼を、不意に引き止める。振り返った彼に、ルカは少し年上の顔をして、口元に弧を描いた。
「あんまり、恋人をいじめないようにな」
これはキラも予想外だったらしい。少し罰の悪そうな顔で頭を掻いた彼は、「まあ、ほどほどにするよ」とだけ言い残し、そしてその場を去った。
ルカの意思が、固まる。


その翌日。ユダとゴウは、ある場所に来ていた。
そこはユダとゴウとルカの三人がよく一緒に過ごした場所であり、そして…ユダとゴウが、互いを恋敵であると認めた場所だった。
「……」
ルカが二人を避けるようになって、そろそろ一週間である。自分達がしたことを考えれば、ルカの行動も尤もだと思っていたから二人はずっと我慢していたし、無理にルカを追い詰めるようなことはしなかった。
しかし、今朝。ルカは普通に、今までと同じように、朝食の場に姿を現したのだ。和やかに微笑みながら朝食をとっている彼に、ユダとゴウが驚いたのは無理もない。
早くルカと話がしたくて、食事中も二人は落ち着きがなかった。そしていざ食事を終え、ルカを追いかけたら。
ルカは逃げたのである。
しかも、ユダとゴウにも追いつくようなスピードで。慌てて追いかけるユダとゴウを彼が確認していたことに、二人も気付いた。だから、彼らはルカを追い続けたのだ。
そして、着いたのがこの場所だったのである。ユダとゴウの前には、二人に背を向けて空を見上げているルカがいた。これ以上、逃げるつもりはないらしい。
「…ルカ?」
恐る恐る、ルカの名を呼ぶ。するとルカはやっと振り返って、ユダとゴウを見た。
その表情は清々しく、思いつめた様子は見受けられない。答えを、見つけたのだろう。
ユダとゴウに緊張が走る。
ああ、どちらを彼は選ぶのだろうか。
ユダとゴウの、どちらを。
ルカはゆっくり唇を動かし、そして、二人がずっとずっと待っていた返事を、口にした。
「…私は、お前達のどちらの恋人にも今はなるつもりはない!」
「…え」
「…は」
…思わず、ユダとゴウは呆けた。しかし、ルカは満足そうに笑みを深めている。どうやら、本気らしい。
「どういう、ことだ」
「言葉通りだ。私は、どちらのものにもならない」
「だ、だがそんなの有か!?」
「有だろう。別にどちらか絶対選ばなくてはいけないわけじゃないのだから」
確かにそれもそうだ。しかし、ユダもゴウもこんな展開は予想外だったらしい。
「大体、私は三人でいる方が好きなんだ。それなのにそんな私のささやかな願いを、よくも壊そうとしてくれたな」
開き直ったように、ルカはふん、とそっぽを向く。ユダとゴウは、思わず顔を見合わせた。
ここ数日、考えて分かったことがある。
ルカが何故あんなに沈み込んでしまったのか。それは、どちらかを選ばなくていけないとルカが思っていたからだ。どちらかを選べば、今までのように三人でいることはきっとできない。
ルカはどちらか一人を自分のものにしたい、とは思わなかった。
対等な三人のままの方が、幸せだったのだ。二人共、同じくらい好きだから。どちらも自分のものじゃなくていいのだ。
「だから私は、お前達の想いに今は応えられないな」
ルカは再度はっきり言い切る。そこまで言われたら、流石にユダもゴウも肩の力を抜く以外他なかった。
仕方ないな、と苦笑して、二人は恋敵に負けたのではなく、ルカに負けたことを実感する。
ああ、でもそんな強い彼だからこそ、俺達は愛したのだ。
「だがルカ。俺は、諦めないぞ?」
「俺もだ」
「え?」
今度はユダとゴウが、開き直る。二人は先程のルカと同じように満面の笑みを浮かべて、ルカを見た。
「ルカは『今は』と言ったじゃないか。それなら、これからもまだまだチャンスがあるということだろう?」
「そうだ。俺達が諦める必要は、皆無だな」
二人は一度視線を合わせて、そして宣言する。
「いつか絶対、お前を落とす」
傲慢な台詞だ。ルカはまさかそう切り返されるとは思わなかったらしく一瞬唖然としたが、しかしすぐ、彼も不遜な笑いを取り戻す。
「…望むところ、だな」


三人の不思議な関係は、まだまだ続く。





恋敵最終章!「恋人〜version.L.改め三角関係続行バージョン」でした。まあ三角関係ならこんなオチも有だよね、ということでしたが皆様どう思ったでしょう?(笑)

そしてまさかのキラ大活躍(・∀・)書いている本人も「こ、このままだとまさかのキラルカなオチになる…!(どどどどどど)」という感じでした。でもキラはルカを兄とも師匠とも慕っているイメージでしたので、うまくもっていけてよかったです。あ、もしかして母として、かもしれませんが(笑)

詳しいことはまた日記でつらつら語ります。恋敵完結第三弾お疲れ様でした!

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