恋敵(ゴウ+ユダ→ルカ)

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『恋敵』 (ユダ+ゴウ)→ルカ〜恋敵シリーズ1


  最近、ゴウの様子がおかしいと、ユダは思っていた。
ルカが声をかけるたびに大きく肩を震わすし、かと思ったら突然物思いにふける。「どうかしたのか?」と問いかけても、気まずそうに「なんでもない」と告げられる。気が付けば彼の視線は自分の隣、ルカに向けられていることが多くて、それはまるで・・・。
「ルカに恋をしているようじゃないか・・・」
溜息混じりで零れた自分の言葉に、ユダはふ、と笑みを浮かべる。
正直、ゴウはそんなことに鈍そうだと思っていた。
「思わぬライバル出現、かな・・・」
はてさて、どうするべきか。


「二人とも、最近なんだかおかしいぞ?」
「は?」
ルカの突然の一言に、ユダとゴウはそろって声を上げた。
両側から向けられる視線にルカはふ、と溜息をつくと、二人を交互にみつめて口を開く。
「一体どうしたんだ?何かあったなら、相談してくれてもいいだろう?」
ルカの言葉に、最初反応したのはゴウだった。
「おい、ルカ。ちょっと待ってくれ。俺たちのどこがおかしいんだ?」
「全部」
さらりとした返答に、ゴウの表情が一瞬石化する。しかしルカはそんなことお構いなしで更に言葉を並べた。
「手合わせの感じとか見ているだけでもギクシャクしているのが分かるし、ゴウは最近一人でたそがれてばかりいるし、ユダはユダで空を眺めながらすぐ溜息をつくし」
予想以上に行動を把握されているらしい。ルカが告げた内容は確かにその通りのことばかりなので、ユダもゴウも言葉が出ない。
「大体、何もない所でこけるなんて、今時はどこぞの漫画でも、ましてはガイですらしないようなことをするし」
ぐ、見られてる。
「歩いていたら突然壁にぶつかるし」
う、覚えていたのか。
「それよりなにより、頭で考えるよりまず行動のお前たちが突然大人しくなったら、誰でもおかしいと思うに決まっているだろうが」
・・・・・ルカよ。お前、俺たちのことそんな風に見ていたのか。
心配してくれて嬉しいような、はたまたさりげない毒舌に切なくなったような。
ユダはそんな微妙な心境で、頭を抱えた。
「あー、ルカ?まあ大した事じゃないんだ。気にしないでくれ」
まさか本当のことを言えるわけもなく、ユダは苦笑を浮かべながらそんな大雑把な返事をする。
ユダの言葉に隣のゴウも、「あ、ああ。俺のも大した事じゃないんだ」と少々強張った笑みを浮かべた。
ルカは明らかに怪しい二人の態度に表情で不満を表し、自分より少し長身な二人の瞳を上目遣いでみつめる。
「私には言ってくれないのか?」
その真っ直ぐな瞳にぐっときたが、ユダは努めて冷静を装った。
「余計な心配はかけたくないんだ」
ふと零れた本音に、ゴウも「大丈夫だから」と念押しをする。
そんな二人の言葉に、ルカは渋々と「分かった」と頷いた。
「それじゃあ、私はもう帰るよ。後は二人で手合わせをしていてくれ」
「ああ、図書館によるんだったな」
ユダの言葉に肯定の返事をして、ルカは背に翼を現す。
そのまま別れの言葉を告げると、彼は空へと羽ばたいて行った。


「・・・・・」
ルカの姿が空に消えていったのと同時に、残された二人はその場で大きな溜息をつく。
「まさかあそこまで気付かれているとは・・・」
ゴウの呟きにユダも「同感だ」と相槌をうって、身近にある岩に腰を下ろす。
「ルカは本当、周囲をよく見ているな・・・」
ユダの言葉に、今度はゴウがうんうん、と相槌をうつ。
ユダは続けて口を開いた。
「ああ見えても結構な曲者だし」
「うんうん」
「無表情なのに感情豊かだし」
「うんうん」
「時にゴウ、お前ルカのこと好きだろう?」
「うんうん、実はそう・・・」
ユダの言葉に、ゴウは本日二回目の石化。
なんとなく予想がついていた彼の反応に、ユダはゴウへと無感動な視線を向ける。
「な、な・・・っ?!」
数秒後復活した彼は、顔を真っ赤にしながら冷や汗だらだらで開口した。
ユダの心中に、やっぱり・・・という思いが広がる。
「まさかお前もルカに惚れるなんて・・・」
「い、いや、決してそのようなことは・・・ってお前、も?」
『も』を強調して首を傾げる彼に、ユダは冷めた視線を向けた。
ゴウの瞳が丸くなる。
「まさか、ユダ・・・お前も?」
信じられないといった顔をする彼に、ユダは大きく頷いて見せた。
ゴウはしばらく混乱したようにフリーズして、そしてその場にしゃがみ込む。
「・・・ユダもだなんて・・・」
ポツリと聞こえてきた呟きに、「それは俺の台詞だ」とユダは溜息をこぼした。
ふいに二人はお互いの顔を複雑な顔で見つめる。
「・・・・・」
無言のやり取りの後、ふ、とユダの唇から笑みが零れた。
「・・・で?諦めるつもりはないのだろう?」
ユダの問いに、ゴウはもちろんだと言わんばかりに大きく頷く。
「ユダこそ。引く気はないのだろ?」
「ああ」
二人は大きく肩をすくめ、そして笑い合った。
「なら、決まりだな」
そうして二人はどちらともなく歩き出す。


二人の未来に幸せはくるのか。それは誰にも分からない。

 終



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