+オマケの三月×ジャック

『もう一人のアリス』



「逃げるなよ」
壁際に追い詰めるように詰め寄った漆黒の髪に茶色の兎の耳を生やした青年は、目の前でこちらを見返す薄い茶髪の青年に唇を寄せた。
茶髪の青年はびくりと体を震わせて潤んだ瞳で漆黒の髪の青年を見返す。長い睫毛がふるふると震える様子に自然と可愛いなと思った。
白くて綺麗な細い首筋に跡をつけられる痛みですら感じるのかとからかうように囁かれた茶髪の青年の顔は耳まで真っ赤に染まる。
「…ゃ…みつきぃ…っ」
甘ったるい声で恥ずかしいと俯く茶髪の青年に名を呼ばれた漆黒の髪の青年、三月ウサギは何だよと意地悪く腕にすがりつく青年の反応を確かめるように服の中に手を滑り込ませた。
「恥ずかしいのが良いんだろ?ジャック…」
耳元に息を吹き掛けられ、服の中をまさぐられて胸にある小さな可愛らしい突起を引っ掛かれてジャックはひゃんっ!と鳴いて、涙目でいやいやと首を左右に振る。
「やめろよ、三月…誰か来たら…あっ」
「見せつけてやれよ。お前のいやらしい姿を、な」
ニィと笑った三月ウサギは構わずジャックのズボンを脱がすと既に待ちきれずに―――

「して欲しいのか」

三月ウサギはジャックの背後から淡々と呟くと、ジャックの手に握られている一冊の漫画に視線を向けた。
背後から気配もなく言われたジャックは目を見開いて三月ウサギを振り返る。

「……いや、単に女王の描いた漫画を読んでただけだし。お前にオレがこんなセリフ吐くわけねーじゃん」
「ふぅん?遠慮すんなよジャック。お前がそんな風に俺に甘えたいとは思わなかったけど…優しくしてやるぜ?」

いろいろと誤解を招くようなやり取りと言葉を言う二人を目前に、アリスは何となく目を逸らす。
白兎はまた妙な組合せで描いてやがりますねと冷めた様子でジャックの手元の漫画を眺め、
帽子屋はみっつんんんっと衝撃を受けている。チェシャ猫はいつもと変わらない。

思いきり引いてもがきながら三月ウサギから距離を取り、気色悪っ!と青ざめるジャックがアリス達に気付いたのはその直後で、不思議そうにえ?何?とこちらを見つめた。

「話があるんだけど、良いかな?」

微妙な空気の中でアリスはそう切り出して、女王の描いた漫画とやらを一先ずは見なかった事にしようと決めたのだった。


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