ドキドキする…どうしよう、動悸に続いて息切れもしてきそう。このまま窒息師するんじゃないかな。いくら水分補給したって喉カラカラだし、手なんてもう冷たすぎ。可笑しいな、初めてじゃないのに、ステージに立つなんてずっとやってきたじゃない。なのに、こんなこんな…!え、えっと…手になんて書いたらいいんだっけ?人…?あ、そっか、人だ!えっと…人、人、人…。

「来栖翔さん入りまーす!」
「ひっ!」

手のひらに人という字を書いていた私の後ろでスタッフさんが叫ぶ。そう、今日私は人気アイドル来栖翔のバックダンサーをやるんだ。私は翔くんの大ファンでいつかバックダンサーで一緒に踊れたらって…思ってた、けど!まさかこんな早く夢が叶うなんて!あ、本物の翔くんだ…!テレビで見るよりちょっと大きい…かな?でもでも放つオーラはひどく人を惹き付ける…これがプロなんだ…。

「皆、今日は盛り上がって行くからな!俺様について来い!」
「「はいっ」」

翔くんの言葉にバックダンサーたちが応える。大丈夫、リハーサルもちゃんと出来た…私は出来る。手を握れば、不思議と体温が戻っていた。ステージ上で配置につき、MCのアナウンスが終わると同時に照明が徐々に明るくなっていく。いよいよ始まる…キラキラとした音楽とともに翔くんが先陣をきって踊り出す。それに続いて、私たちも踊り出す。翔くんの背中を見ていると、すごくキラキラしていて、時々此方にアイコンタクトしてくれるのが嬉しくて、楽しくて…あっという間にその時間は終わった。ファンの歓声に翔くんは手を振り、ステージを降りていく。うわあ、翔くんはやっぱり凄い…!そでに戻ると翔くんがダンサー一人一人に労いの言葉をかけていく。やっぱり他にも翔くんファンが居たみたいで、握手を求めたり歓声をあげたり。そして、遂に私の番が来た。

「お、お疲れ様です…!」
「おうっお疲れ!」
「え、えっと…翔く…来栖さん、すっごくキラキラして、すっごくかっこよかったです…!私もあんなダンスが踊れるように努力します!」
「ああ、お前のダンスも凄かったぜ、キレもリズムも!」

え、見ててくれたの…?あ、いや、たまたま目に入ったんだよね…うん、そうだ。

「お前、この間音也のバックで踊ってただろ」
「へっ!?あっ、なんで知って…」
「音也は俺様と同期だし、同じ人気アイドルだからな…ちゃんとチェックして…ってそうじゃない!その時のお前のダンス、一番輝いてた!ああ、こいつセンスいいじゃんって思ってたら、リハーサルの時居るんだもんな、正直驚いたよ」

うそ…そんな前から…どうしよう、なんか涙出ちゃいそう。

「ま、俺様には敵わないけどな!お前、名前は?」
「は、はいっ!窪塚梨音です…!」
「窪塚な、覚えとく!また一緒に踊ろうぜ!」

そう言って、私の頭を翔くんがポンポンと撫でる。翔くんが通り過ぎた後頬に触れればびっくりするぐらい熱い。両手で両頬を冷やそうとするけど、手もすごく熱くて逆に温度が上がった。どうしよう、嬉し過ぎる…!また一緒に踊ろうって言ってくれた!また一緒に踊れるかもしれないんだ!今まで以上にダンスの練習を頑張ろうと決意した私の頬は緩みきっていて、どう頑張ってもしまりそうになかった。





私のダンスヒーロー

翔ちゃんがキラキラし過ぎてつらい