知ってた、知ってた筈だった。 彼がすごく真っ直ぐな人で、嘘なんてつけない人だって。 そんな彼に惹かれたんだ、そんな彼だから惹かれたんだ。 そうだけど、そうだけどさ。 あまりにストレート過ぎるんじゃないかな。 「ちょ、嵐くん…!」 「好きだ、梨音」 「わ、わかった!わかったから…!」 背中には壁、目の前には彼。 私には逃げ場なんてなくてどうにか彼から視線を外すことしか出来ない。 顔の両側には壁に肘をついた彼の腕があって、とても逃れそうにない。 押してどいてくれるなら最初からやってる、私の力じゃ彼はびくともしない。 そう分かっていても抵抗する私を見て結構楽しんでたりする。 彼のファンから言わせたら迫られてキャー!なんて幸せな状態なんだろうけど冗談じゃない。 好いてくれているのは嬉しいが流石にこうも攻められていると泣きたくなる。 「なあ、こっち向けよ」 「あ、嵐くんがもう少し離れてくれたら…」 「俺はこの距離でお前を見てたいんだけど」 「恥ずかしいんだってば!」 「そんなにわかってるけど」 本気でこいつ!って思った。 少しだけ涙目で彼を睨んで見ても「んな可愛い顔すんな」って…こんな顔したくてしてる訳じゃありません。 ああもう誰でもいいから助けてください、この状況はあまりにも私には辛すぎます。 そりゃこんなに接近したのが初めてじゃないけど、私はまだ慣れないの。 彼の隣に居るのだってどきどきして心臓飛び出しそうなのに、こんな距離意識が飛んで行っちゃいそう。 どうして彼はこんなに余裕なんだろう、もしくは平然としていられるんだろう。 流石に限界が来たのかぐいっと私の顎を掴むと一気に顔を寄せてくる。 一度目は短めのキス、すぐに二度目が降ってきて、今度は深くなる。 息苦しさに抵抗しようとするけど、腕は掴まれて足の間には嵐くんの足があって動けない。 必死に酸素を求めようとすれば恥ずかしいぐらい甘い声が漏れる。 ようやく放してくれたけど、酸欠で意識が朦朧としている。 「…本当に色っぽいよなお前」 「…もう嵐くんなんて嫌い」 「いいよ、何度でも好きにならせてみせるから」 ああもうなんでこんなに男前なのかな! 言い返そうにも言い返せないじゃない! 「梨音」 「…何?」 「もう一回」 「え、ちょ…んんん!」 有無を言わさず唇を奪われる。 これでも乙女の唇なんだから丁重に扱ってほしいものだ。 もうこれは仕方ないなと抵抗をやめれば、腕を掴んでいた手を解いてくれる。 そのまま彼の背に腕を回せば、力強いけど優しく抱き寄せてくれる。 何度も落ちてくる口づけを受けながら、頭の中は彼でいっぱいになって行った。 全思考ジャック (このまま何もかも奪っていって) title by hmr 皆さん仰っていることですが、嵐くんマジパレード。 |