「馬鹿人識」

「ああん?!」



どこぞのチンピラだという声を出して人識が振り向く。

対する私は膝を抱えて人識を睨む。

普通こんな刃物を持った危ない奴に「馬鹿」なんて言わない。

私が普通だったなら、絶対言わない。



「また出夢と遊んでたんでしょ、いいわね楽しそうで」

「あいつがふっかけてくるんだから仕方ねえだろ」

「仕方ないで片付けちゃうんだ、あんたにとって私ってそんなものなんだ」

「なんでそうなるんだよ」

「人識が私を絶賛放置中だから」



一応私達は恋人同士。

けど愛すべきダーリンは身体は女性、精神は男性なんていうとてつもない子と毎度毎度殺しという名の遊びに没頭。

その間勿論私は放置な訳で、戦闘スキルなんか皆無な私は止めに入るなんてことも出来ない。

そして何故だか人識のナイフの管理なんてのもさせられる。

これ恋人って言うよりいいパシリなんじゃないかと最近思う。

殺人鬼だから勿論職に就く訳じゃない、私がバッチリ稼いでる。

所謂ヒモ状態。



「へえ、妬いてるわけだ」

「そうよ」

「…そこは”別に妬いてない”とか言うとこだろ」

「そんなツンデレなんか誰がやるもんですか」

「…傑作だ」



そうお決まりの台詞を言って、持っていたナイフを置き私の方に寄る。

可愛さなんて持ち合わせてない私は睨んだままの表情。

対する人識はこれ以上ないってくらいニヤニヤしている。

…ああ、なんかイラッとした。



「で、どうして欲しいんだ?お姫様」

「…似合わないことやめなよ」

「素直になった方がいいぜ?俺が飽きないうちに」



そう言いつつニヤリと笑う人識に、そっとを顔を寄せる



「そうねえ…それじゃあ」








キス百回で許してあげる
(安いもんでしょ?)
(ああ、百回と言わず一万回でもしてやるよ)
(…傑作だわ)


title by narcolepsy

すいません、最後がやりたかっただけです。

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