「やあ、また会ったね」
「…どうも」
無表情ではあるけど一応挨拶をする僕に微妙な表情で返す彼女。
素朴ではあるけど綺麗な方で、彼女は所謂僕のお気に入りだったりする。
出会ったのがいつだったのかなんてのは忘れてしまったけれど、第一印象なんて簡単、どストライク。
人類最強が僕の家に連れて来た彼女は、僕の顔を見てそりゃあ此方が逆に気持ちがいいくらい露骨に嫌な顔をしたものだ。
こんなに嫌な顔をあからさまにされたのは久しぶりだったので、それはそれは苛めたくなるわけで。
潤さんに殴られるまでからかい続けた(勿論戯言で)
そんなことがあってからか彼女は僕に会う度に凄く嫌な顔をする。
今の僕にとってはその表情が愛しくて堪らない、変態?
この際上等だね、寧ろ褒め言葉だ。
「何をしてるんですか」
「ちょっと散歩、かな?君は?潤さんと一緒じゃないんだ」
「潤さんは…今日お仕事ですから」
「そう」
何だか会話が続かない。
とりあえずもう少し距離を詰めようと一歩前に出せば、同じように一歩下がられる。
もう一度同じことをやれば、あとは言わずもがな。
あ、なんだろう、凄く楽しくなってきたかも。
「そう言えばこの間の続きなんだけど」
「…もういいじゃないですか」
「これくらい言わせてよ、僕は君が嫌いだよ、殺したいくらいにね」
「奇遇ですね、私も貴方がこの世界に存在したという証全てを抹消したいくらい嫌いです」
「ああでも、寂しい君の為に恋人ごっこぐらいは付き合ってあげてもいいかな?」
「冗談でしょう?女性経験がなさそうな顔をして何を言うんですか」
「こう見えても僕はかなりモテるんだけどね」
少しばかり彼女の眉が動く。
分かりやすいなあ、強がっても手に取るように何を考えてるか分かるんだから。
こういう分かりやすさって潤さんと一緒に居る上で邪魔にならないんだろうか。
あ、潤さんだったら「その方が面白い」って言うのか。
「そういう君だって男性経験無さそうじゃない」
「私にだって少しくらいはありますよ」
「ふーん、じゃあ今度それを教えてもらおうかな」
「私が?貴方に?そんなことをするくらいなら人類最悪と一夜を共にする方がマシです」
「どうして比較対象をそこに持ってくるかな…しかも、あの人と一夜なんて希望する人の方が多いと思うんだけど」
「潤さんの敵は私の敵ですから」
「ああ」
なるほど納得。
まあ潤さんの敵は僕の敵にもなるってことは分かってるんだろうか。
冷静を装って向きになる、やっぱり面白いなあこの子。
「もう一度言おうか、君のことが世界で一番嫌いだよ、僕の手でその生を終わらせてあげたいくらい」
「…私も、世界で一番貴方が大嫌いです、人に殺されるのが惜しいくらい」
言えないのはお互いさま
(だってお互い嘘つきだもの)
title by narcolepsy
素直じゃないとかそういう次元じゃない。