「うーん、うーん」

「何やってんのよ」



ずしりと頭に何か重みがかかる。

確認せずともそれは私の親友で、先ほどから携帯と睨めっこを繰り広げている私を見かねて寄ってきたらしい。

でも私、首強い訳じゃないから、正直きつい。



「ちょ、ギブギブ…首折れる折れる」

「あ?こんなんじゃ折れないって…あと人間って嘘だと二回言うんだって、知ってた?」

「…若干辛くなってきたのでどいて下さい」

「やだ、面白くない」



可愛くないわね本当に!

私達二人が居るのは大学内の講堂で、現在休み時間。



「ていうかさ、もうじれったいからかけちゃえばいいのに」

「だって絶対忙しいんだもん」

「ならメールは?忙しくても合間で見れるでしょ?」

「うーん…でも直接言いたいし…」

「じゃあ会いに行けば?」

「練習とかで疲れてるでしょ」

「優柔不断」

「最初から分かりきってることじゃない」



あからさまに親友の顔が歪む。

まあ確かに可愛くないこと言ってる、自覚はある。



「今日は誕生日だから大目に見てくれるでしょ?」

「…そうだろうけど」

「彼優しいもんね」

「そう、だからきつくても絶対相手してくれんの…それがなんか罪悪感感じちゃって」



現役女子大生の私には、こんな可愛げがなくとも高校から付き合っている彼氏が居る。

彼は現在プロ野球界でルーキーとして超有名人。

まあ高校の頃からも名門海堂の4番でキャプテンってすっごい有名だったんだけど…。

そんな彼が今日誕生日ということで、直接会えなくともおめでとうぐらい伝えたいなと思ったんだけど…。

かたやプロ野球選手、かたや普通の女子大生。

時間とかいろいろ合わないことだってたくさんある、そんなの高校を卒業する時から分かってた。

それで彼に負担なんてかけたくない、まあおめでとうって言うくらいで負担なんて感じないのかもしれないけど、丁度眠たい時

に電話かけちゃったとかやだし、彼絶対眠くても普通に相手してくれるだろうし。



「優しすぎるんだ、ばーか」

「…あんたそんなこと言ってたら罰当たるよ」

「充分分かってます」











結局メールも電話もしないままバイトに行って今に至る。

ああ、もう本当に後悔。

やっぱり誕生日って彼女から連絡欲しいよね。

帰ったら電話しよう。

留守電でもいいからちゃんとおめでとうって、自分の口で伝えよう。



そんなことを考えながら歩いていると、家の前に誰か立っているのが分かった。

それが誰か認識すると、急いで駆け寄った。

足音で気付いたらしく、私の姿を確認すると、いつものあの笑顔でニコリと笑った。



「おかえり、大学ってこんなに遅いの?」

「いや…今日はバイトだったから…」



ハアハア、と息が整わない。

落ち着け、落ち着け…まさか寿が此処に居るなんて思わなかったから慌てた。



「今日…野球は?」

「今日は試合がないから軽くトレーニングした程度だよ」

「そっか…」

「ちょっと期待してたんだけどね」

「え?」

「梨音から、メールとか電話とか来ないかなって」



寿の言葉に血の気が引くのが分かった。



「ご、ごめん!そ、その…邪魔になったら悪いかなって…」

「冗談だよ、それに、そんなことだろうって思った」



両手が、寿の両手で包まれる。

また、大きくなったような感じがする…いや、サイズ的には変わってないんだろうけど…。

肩とか筋肉がついて一回り大きくなったような…テレビとかで見てたけど、実際に会うともっと大きく感じる。

ああ、これが会わなかった時間の結果か、なんて思うとなんだか悲しくなった。



「そんな顔しないでよ」

「ごめん…なんか久しぶりなんだなあって思って」

「寂しかった?」

「少しね」

「本当のこと言っていいよ」

「…すっごく」



ほら、見透かされてる。

嘘なんて、絶対につけないんだ。

こんな時にどうしよう、すっごく甘えたくなってきた。

でも駄目だ、軽くトレーニングなんて言ってるけど疲れてるだろうし…。



「甘えてもいいんだよ?」

「駄目だよ、寿疲れてるのに…それに誕生日にそんな」

「僕がいいって言ってるんだから」

「…じゃあ、ちょっとだけ」



此処が家の前なんてことも気にせず、寿にぎゅっと抱きついた。

本当に子供みたいだなー私、なんて考えていると、大きな手で頭を撫でられる。

ああ、今が一番落ち着く。



「お誕生日おめでとう寿、なんかこんな彼女でごめん」

「謝ることないよ、僕は梨音がいいんだから」

「うわあ…誕生日なのは寿なのにこんなに私幸せでいいのかな」

「僕も幸せだからいいよ」



そう言われたのが嬉しくて、抱きしめていた腕にさらに力を込めた。










しあわせは此処にある
(二人揃えば笑いあえる、それでいいんだよね)



title by Aコース



Happy birthday!!

09,09
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