雅治達の姿が見えなくなって、ブン太は自分が手を繋いでいたことに気づいて、慌てて手を離した。

…別に繋いでても良かったのに。




第7話:合宿へ行こう〜part3〜






「ご、ごめん!勢いで繋いじまった」

「別に繋いでても良かったんだよ?」

「え…?」

「その方が逸れたりしなくて済むし」

「…そうだな、そうだよな…」



ブン太が少し落ち込んだ。

あ、あれ?私何か悪いことした?



「ぶ、ブン太…?」



私がブン太の肩に手を置こうとした時、向こうから声が聞こえた。



「ねぇ、跡部。ちょっと質問してもいいかな?」

「アーン?何だよ幸村」



声の主が景吾と精市だということは、聞いてすぐに分かった。

ブン太にも聞こえたらしく、声のする方を向く。

私たちが居るのは道の突き当たりで、あと2、3歩前に出れば、二人の姿を確認することは出来る。

でもそれはしない。

ブン太も私もちょっとだけ二人の会話に興味があった。



「君は、湊とは幼馴染だよね?」



え、私…?



「あぁ、それがどうした?」

「湊は小、中とテニスやってたよね?」

「あぁ」






「僕の記憶…まあ情報が正しければ、湊は確か氷帝のミクスド選手のはずだけど?」



え…ちょっと待ってよ…。



「ほう…よく調べたな」

「フフ、有名じゃなかったかな、氷帝の才崎湊って」

「まあ、ミクスドだけでなく…シングルスでも実績を残していたからな、アイツは」

「そして、そのシングルスの試合中…



右肩を強打してテニスが出来なくなった」



精市の言葉は、嫌なほど綺麗に聞き取れた。

なんで…なんでそのこと…もう忘れようと思ってたのに…。



「父親が会社の場所を移す事になって神奈川に…そして立海に来た、間違ってるかい?」

「いや、合ってる」



…そうだ、ブン太。

ブン太にも聞こえてるはず、聞かれたくないのに。

ブン太の姿を探すと、先ほど居た場所には居なくて、すでに精市たちの前に立っていた。



「どういうことだよそれ…」

「ブン太…」

「アーン?なんだ丸井…聞いてたのかよ」



景吾がしまったという顔をした。

ブン太の顔は何だか怒っていた。



「湊はテニス、怪我してやめたってことかよ!」

「そうだよ…湊も出ておいでよ」



…気づいてたんだ、精市。

渋々出て行くと、景吾が私の名前を呟いたのが聞こえた。

まだ下を向いて俯いていた私は、皺になるというくらい、服をギュッと握っていた。



「…跡部、湊の怪我は治らないのかい?」



精市が景吾に問う。



「治る見込みはない…そうだ。此方でも、このことを知っているのは俺と忍足ぐらいだがな」



そうだ…私、景吾と侑士以外の皆に言ってないんだ、このこと。

だから、まだ皆私が怪我を治したらテニスが出来るって信じてるんだよね…。

ちゃんと、本当のこと言ってくれば良かったのに…。



「…ホントなのか?湊」



上手く声が出せそうになかったので、小さく頷くだけにした。



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