立海大に転校して一ヶ月が経った。

テニス部のマネージャーになった私は、すでに嫌味を言う事はなくなり、仕事を楽しんでいた。




第3話:テニス





「湊せんぱーい!こっちタオルいいッスかー?」

「あ、待っててね、赤也」

「湊、ちょっといいか」

「あ、今行くよ、蓮二」



こんな感じで、レギュラー陣の名前は下の名前で呼ぶようになっていた。

自分でもこの進歩にビックリよ…。



「よし、練習は今日はこれで終わりだ」

「「お疲れっしたー!」」



部員はストレッチを始めたので、私も片づけを始めようとした。



「あ、手伝うぜ、湊」

「有難う、ジャッカル。でもストレッチしっかりやっといて?怪我したら大変でしょ?」

「あぁ…本当に大丈夫か?」

「大丈夫!もう慣れてきたんだから」



ニッコリと笑うと、少し心配そうだけど、ジャッカルは皆のところに戻って行った。

空になったボトルを持って、私はコートを離れた。



「…蓮二、調べてくれたかい?」

「あぁ、やはり精市の予想通りだったな」

「そうか…やっぱり湊は…」

「…しばらく様子を見よう」

「そうだね…」



蓮二と精市がそんな会話をしていたことを、私は知らなかった。












「ふぅー…これで終わりっと…ん?」



仕事が終わって安心していたら、コートの方から音が聞こえた。

まだ誰かが打っているらしい。



「誰だろ…もう皆上がってる筈なのに…」



疑問に思って、コートに近づいてみる。

そこには、壁打ちをしているブン太が居た。


「ブン太?」

「んお?湊か」



流れる汗を拭きながら、ブン太が此方を向いた。

ちょっとだけ溜め息をつきながら、私はブン太に近寄った。



「もう皆上がったよ?」

「あぁ…でも後もう少し!」



そう言って、またボールを打つブン太。

何だか溜め息が出た。

私の足元にラケットが落ちているのを見つけて、それを手に取った。

誰かの忘れ物かな…?

ラケットとブン太を交互に見ながら、私は言った。



「ねぇ、ブン太。私で良かったら相手しようか?」

「は?」



ブン太が驚いたような顔をする。



「だから、私が練習付き合おうか?」

「…いいのか?」

「いいよ、私じゃ不満?」

「…そんなことないに決まってんだろぃ」




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