会いたくて、会いたくて…。

もう、伝えるしかないんだ。



第26話:笑顔をみせて





「湊、景吾君」



母さん達が部屋に入ってくる。

そして、母さんが私の傍に寄る。

私の両肩にそっと手を置くと、ゆっくりと言った。



「湊…実はね…」










走った、もう全力で。

早くお前のとこに行きたくて…。



「あともう少しですっ!」

「…おうっ」



横を走る才崎も必死になっている。

…何だかんだ言ってコイツ、いろいろ協力してくれてんだな。

角を曲がると、結構でかいホテルが見えた。

「此処です」と言う才崎の後を、ついて行く俺たち。

目の前に扉が見え、それを勢いよく開く。



「…っ、湊!」



バンッと音がする。



「ブン…太?」



湊が驚いた顔をする。

その部屋には、跡部と湊だけだった。



「昇に…それに皆まで…」

「姉ちゃんごめん…」



才崎がしゅんとする。

俺の肩をポンと誰かが叩く。

後ろを振り向くと、幸村が微笑んでいた。



「ブン太、伝えておいでよ」

「…おう」



幸村に微笑ながら答えつつ、俺は前に出た。



「湊…その…」

「…黙ってて、ごめんね?」

「え、いや…」



困ったように微笑みながら、湊が言う。

そんな顔すんなよ…。

グッと拳を握る。

そして、まっすぐに湊を見て、ハッキリとした声で言った。



「湊…俺さ、お前の笑った顔とか、マジで好きだ」

「ブン太?」

「そりゃ、時にはコイツ馬鹿じゃね?とか、いろいろ思ったりしたけど…」



ああ、やべぇ…これじゃ喧嘩売ってるみたいじゃねーか。

立海の奴らからも微妙なブーイングきてんぞ…。







「湊…俺、マジで湊に傍に居て欲しいんだ。だから…跡部と婚約なんかすんな!!」



言えた…。

そんな俺に、湊が近づいて来る。

そして、ニッコリと笑って言った。



「有難うブン太、私もだよ」

「だったら…!婚約なんか!」

「うん、婚約しないよ」

「だからすんな…って、え?」

「だから、景吾婚約しないって」



・・・・・・・・・

今、俺の聞き間違え…とかじゃないよな?



「え、だって才崎も言ってたし…」

「うん、昇の言ってたことは正しいよ?実際もう少しでしそうになってたし」



ニコッと笑う湊。

…なんかすっげー体の力抜けんだけど…。



「婚約、破棄したのかい?」



幸村が湊に聞く。



「うん…景吾がさ、父さん達に話つけてくれたんだって」



跡部の方を見る。

すると、ハンッと鼻で笑った。



「俺もコイツと婚約するのが嫌だっただけだ、勘違いすんな」

「おうおう、素直じゃないのぉ」

「何だ…仁王」

「跡部、お前さん、いい奴じゃの」

「ハンッ勝手に言ってろ」



そんな仁王と跡部のやりとりを聞きながら、柳が赤也に尋ねた。



「赤也…いいのか?」

「…いいんすよ、俺は。もう振られたって分かってますし」

「赤也」

「それに…先輩が誰のこと思ってるかくらい、見れば分かりますって」

「…一応、お疲れと言っておこう」

「…ウィーッス」



少しだけ俯きながら、赤也が返事をした。



「でっさー…」



ニヤニヤしながら湊が顔を見てくる。



「な、なんだよぃ」

「今さっきのさー…すっごい愛がこもってた様な気がしたんだけど?」



カァアアと顔が赤くなる。

対する湊は楽しそうに笑っている。



「ようなじゃないぞ湊、実際にそうじゃ」

「なっ!!仁王!!」

「ほれ、早く言いんしゃい、じれったいのー」



ニヤニヤしながら仁王が言ってくる。

…マジでムカつく。



「あー…もう、こもってました、えぇ、こもってました!」

「ヤケクソで言うなよ…じゃあ、ちゃんと言ってよ」

「はぁ?!」



思わずでかい声が出る。

湊はジーッと俺を見つめる。



「…なんかお前、キャラ変わってね?」

「そうでもないよ、ていうか話そらすな」



早く言え!っと言ってくる湊。

…お前幸村に似てきてねぇか?

ハァと溜め息をつきながら、自分の顔を見られないように、湊を抱きしめた。



「…俺、お前が好きだ」

「…そっか」

「ってそれだけかよぃ!!」



そっけない返答で思わず突っ込んだ。

そんな俺に、クスクス笑う湊。

あぁ、マジ顔が熱ぃ…。



「で、お前はどうなんだよ」

「え、私?」



惚けた声を出す湊。



「返事…聞かせろよ」



真面目に言うと、フゥと湊が息を吐いた。

そして、ゆっくりと言う。



「そうだね…私は―…」













三年後―。



響いているのは、ボールがラケットに当たる音。

聞こえてくるのは、大勢の声援。



「ったく、長いっつーの」

「仕方ないでしょ?ほら、もう始まるんだからしっかりしてよ?」

「言われなくても分かってる」

「…相変わらずだな本当…」

「まぁ、俺の天才的妙技にかかれば、どんな奴も敵じゃないぜぃ?」

「とかなんとか言って、この前それで危なかったでしょ?」

「う…それを言うか?」

「当然です」



同じジャージを着て、何かを待っている集団が居る。



「もうそろそろだな」

「そうだな…もう時期来るだろう」

「それにしても、あいつ等が…のぉ?」

「そうですね…でも、まぁ当然の結果でしょう」

「あぁ、アイツ等だからな」

「ミクスドで決勝…やってくれますよ、先輩達」

「フフ…来たみたいだよ」



そんな彼等の前に、同じ色のユニフォームを着た男女の姿が。

フフ、と笑う。





「さあ、今日はどんなプレーを見せてくれるんだろうね、湊とブン太は」







「おい」



声をかけられる。

目の前には、幼馴染の姿。

私達を指差して、ゆっくりと言う。



「悪いが、勝たせてもらうぜ?」

「…上等だ、俺たちは負けねーぜぃ」

「うん、景吾には悪いけど勝たせてもらうね」




いつだって一緒に居たい。

いつだって笑い会ってたい。

いつだって伝えたい。

そんな幸せな時間が続くように…。






「ゲームセット!!ウォンバイッ、丸井・才崎ペア!!!」




笑顔を君に。




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