いつまでも笑いあって、それでいけると思ってた。
ねぇ、違うの?
第23話:姫君
あんなテンションではあったが、私達はまだ勉強を続けている。
「ドゥーユーノートーキョー?」
「そうそう、だいぶ分かるようになったね」
「湊先輩の教え方がいいんスよ」
皆私の説得で、とりあえず手伝ってくれるようになった。
で、今私は赤也を教えている。
ブン太達は蓮二達に任せた。
「…にしても、やっぱり初々しいのぉ」
そんな雅治の声が聞こえた。
…コイツは本当に…。
「雅治…いい加減それしまってよ」
「そんな面白くない」
「いやいや、面白さを求めてないから」
雅治はまだあの雑誌を見ている。
…いい加減やめてくれないかしら。
「やっぱり響きがいいんじゃ、”氷の姫”」
「はっ?!」
思わず声が出る。
何?氷の姫って…。
「お前さんの二つ名じゃよ。パートナーが”王”だからのぉ、差し詰め”氷帝のお姫様”ってとこじゃろ」
「…誰がそんな恥ずかしいものを…」
てか姫なんて柄でもない。
ありえないって。
とりあえず、苦笑いするしかない。
「それ、間違ってるよね」
精市が否定する。
そして、ニッコリと微笑むと…
「湊は”海の姫”だろ?」
・・・・・・
「あ、確かに、湊は今”立海の姫”、だもんな」
「いやいや、そもそも姫って感じじゃないし…」
あの頃は本当にテニステニスで…。
まあ、確かに恋したりとかあったけど…。
私のちょっとした変化に気づいたのか、ブン太が話しかけてくる。
「湊」
ブン太の表情が真剣になる。
「何?」
「あのさ…
氷帝に戻りたいとか…思うか?」
思わずポカンとする。
でも…そうだよね、気になるよね。
微笑みつつ、ゆっくりと言った。
「そりゃ、氷帝の皆も大好きだけど…今は、私は立海に居たい」
皆の顔が明るくなる。
真剣な顔だったブン太が、ニッと笑った。
「そっか、そうだよな!」
トクン…―
あれ、なんだろ…。
今、すっごい…。
「さて、そろそろ帰ろうか」
精市が言う。
「お邪魔しました」
「また学校でな」
「有難うございました!湊先輩!」
「また勉強教えてくれ」
「うむ、いい勉強が出来た」
「フフ、またね」
「プリッ、明日な」
「…じゃあな、湊」
「うん、バイバイ」
そう言って手を振って、皆は帰っていった。
その夜―。
「ただいま」
「お帰りなさい、貴方」
「ああ…湊は居るか?」
「湊ですか?」
「お帰りなさい、父さん」
「ああ、湊。ちょっと座りなさい」
「う、うん…」
父さんに言われたとおり、正面に座る。
「実はな、湊に話があって…―」
そう、まさかそんなことになるなんて思わなかった。
聞いた時、私は自分の耳を疑った。
これはきっと…
何かの冗談だろうって。
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