リョーマがコートに入ったので、逆のコートに入った。



「何が始まるんだろうね?」

「でも、面白そうだよ」



タカさんと周ちゃんが楽しそうに言う。

…やる私はいろいろ辛いんだけどなー。



「…そろそろ行くよ」



あれ…周ちゃんの台詞…うつっちゃった…。

ポーン、ポーンとボールが跳ねる音がする。

ボールを高く投げ上げると、パコンとラケットが当たる。



「ツイストサーブ!」



誰かが叫ぶのが聞こえたけど、確認してないから分からない。

それを、何も気にせずにリョーマが打ち返す。

私は、それに対して目を瞑った。

そして、ボールを感じる―、



パンッ



リョーマの横を、ボールが通り過ぎる。

それを見て、ニッと笑った。

…あれ、私今決めたよね?



「何決められたのに笑ってるの?」

「別に?決められるつもりでやったし」

「・・・」

「何、何?!今の何?!」



皆が寄ってくる。

ちょっと、貞治なんてなんかカリカリ書いてるんだけど…!



「湊、これを蓮二に見せた事は?」

「え、あ…ないけど…」

「それにしても凄いな、目を瞑った時はどうなることかと思ったけど…」



秀一郎が関心する。

その横で国君も興味深そうな顔をする。



「おや、アンタたち…湊のMoment見せたことなかったかね?」

「「「Moment?」」」

「Momentって…”瞬間”って意味のmoment?」

「そうだ、ミクスドに出た奴は一度くらい目にしたことはあるんじゃないか?」

「え、いや…そんなに使わないんで…」

「すごいすごーい!」

「流石ッス!湊さん!」

「湊、怪我をしているとは思えないな」

「それを言うなら国君だって凄いでしょ」



ニコッと笑うと、なんとなくだけど国君の表情が緩んだ気がする。



「あの技…何度見ても出来ないんだよね」

「…何まねしようとしてるのそこ」

「だって、昇は出来るようになったんでしょ?」

「ううん、これだけは教えてない」

「はっ?!」



リョーマが驚いた顔をする。

…まぁ私が自分のプレーを昇に教えたこと、リョーマは知ってるからね。



「うん、これだけは…ね」



いろいろ思い出があるんだよっていうのは、あえて言わない事にした。

何か微妙に俯いちゃったから、英二が心配そうに顔覗いてるんだけど…。

「気にしないで」って言ったら、「そう?」って笑ってくれた。








携帯が鳴る…というか時間を見たらやばかった…。

多分これは…。

恐る恐る、ディスプレイを覗いて見る。




【幸村精市】



あぁ、やっぱり。



「あーえっと…どちら様ですか…」

「へーどの口がそう言ってるのかな?」

「すいませんでした」

「そろそろ帰っておいで」

「…分かった」



ピッ。



「幸村か?」

「うん、精市だった…今日は有難うございました!」

「あぁ、部員達のいい刺激になった」

「また機会があったらな」

「立海でも頑張ってね、何かあったら呼んでいいから」

「湊!またいっぱい話そうな!」

「立海のメンバーに宜しく言っといてね」

「湊さん!次会う時楽しみにしといて下さいね!」

「…また、プレー見て下さい」

「今度ウチにテニスでもしに来たら?ウチの親、会いたがってたし」

「ハハ、考えとくよ。それじゃあね!」



そう言って、手を振る。

それに、手を振り返してくれた。



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