「くおらああああああ!!」
「どりゃああああああ!!」
今日も、立海大は平和です。
第18話:最強・最高
「オラオラ!!遅いんじゃねぇの?赤也!!」
「あぁ?!昇の方が遅いだろ?!」
ピッ
「お…二人ともちょっとタイム上がってる…」
昇達が来て三日目。
赤也と昇は気が合ったらしく、今みたいに競い合ったりしてお互いにいい練習になったりしている。
今では昇と赤也呼びにまで…。
「でもさ…完璧に、偵察っていうこと忘れてるよね?」
「…そうですよね」
タイムを計る私の近くでストレッチをしている長太郎に言うと、ハハハと苦笑いした。
「そもそも偵察って、相手の弱点とか探るのが目的じゃ…」
「寧ろ跡部さんが昇に頼んだ時点でそれは無理だと思いますよ?」
「…そうだね、んで、今回の目的はきっと…」
「「昇の練習意識の向上」」
長太郎と声がハモッてやっぱりと思った。
思わず溜め息が出る。
「此処最近、昇、跡部さんに”姉ちゃんに会いたい”ってずっともらしてたんですよ」
「あ…すっごい予想つく」
「それで、”立海と練習試合しないのか”とか”合宿はまたないのか”とか…」
「・・・・・・・」
我が弟ながらなんだか恥ずかしいぞ。
「それで湊先輩に会えば元気になる、尚且つ此方でいいライバルが見付かると思ったのかと…」
「まぁ、昇がまだ立海の選手に勝てないのくらいアイツでも予想ついただろうし…」
「でも正直あの試合勝てると思ったんですけど…」
「うん、ちょっと危なかったかな?」
でも、思った以上に赤也とブン太のコンビネーションが良かったんだよな…。
長太郎と昇もなかなかに良かったし…。
「長太郎と昇ってさ、よく組むの?」
「ハイ、まあ昇も宍戸さんと同じカウンターパンチャーですし…尚且つ、まず宍戸さんと湊先輩のプレーが似てますからね」
「あぁ、確かに…前さ、ミクスドで組んだ時、お互いのプレーがそっくりすぎてさ…逆にそれでやり辛くって」
「あぁ、そんなこともありましたね…でもやっぱり湊先輩は跡部さんとが多かったですよね?」
「何故だかね、まぁ岳人とも結構やりやすかったんだけど…なんでか景吾だった」
ハハと笑う私。
「でも…黙っててごめんね?」
「あ、怪我のことですか?それなら大丈夫ですよ、俺たち、湊先輩が元気ならそれでいいですし…高校でまた始めるんでしょう?テニス」
ニコッと長太郎が笑う。
それに答えるように、私もニコッと笑う。
「うん、氷帝にも勝っちゃうつもりでいるから、ナヲミちゃんに宜しく言っといてね?」
「ハイ、多分鳥取さんも喜ぶと思います」
「湊ー!ちょっといいか?」
「あ!はーい、んじゃ、行って来るね」
「ハイ、マネージャー業頑張って下さい」
そして練習が終わり、昇と長太郎は帰る事になった。
今皆で、駅に見送りに来ている。
「…なんか、偵察に来た相手を見送りだなんて…」
「なんか偵察ってこと出来てねーよな」
「跡部さんだって初めから期待してないと思うよ?」
長太郎の言葉に、ちぇっと言う昇。
その昇の前に、赤也が出る。
「次は公式戦でやろうぜ!次も俺が勝つからな!」
「いーや、次は俺が勝たせてもらうぜ?氷帝なめんなよ?」
「お前も、王者立海の底力、見せてやるよ」
お互いに、ニッと笑う。
なんだか微笑ましい感じ…。
そして、昇がブン太の方を向く。
「丸井さん!」
「ん?」
ガムを膨らましているブン太に、ビシッと指を指す。
…人に指を指しちゃいけませんって突っ込むべきかな?
「次こそ必ず勝ちます!てか、あんたにだけは負けません!!」
ニッと笑う昇。
「…上等、いくらでも相手してやるよ」
そして、同じようにブン太も笑う。
「じゃあ、お世話になりました」
「うん、一応景吾達にも宜しくね」
「姉ちゃん!!またなー!!」
力強く手を振りながら、昇達は帰って行った。
「…何だかあっという間だったね」
「そうだな」
「うむ…いい刺激になった」
「そうですね、何だか少し寂しい気もしますが…」
「確かに、アイツもアイツでいじりがいがあったからのぉ」
「やっぱり雅治はそっちなのね…」
ハァと溜め息をつく。
ポンポンと精市が手を叩く。
「さぁ、シンミリしてる場合じゃないよ?次当たる時、足元すくわれたら元も子もないからね」
それに答えるように、皆ニッと笑う。
そして―、
「「「イエッサー!!」」」
どうやらあの子達は、皆にいい刺激を与えてくれたようです。
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